2020 Fiscal Year Research-status Report
読むことにおける理解の深化に資する対話を核とした教育評価に関する研究
Project/Area Number |
20K14019
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高瀬 裕人 琉球大学, 教育学部, 講師 (30823083)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形成的評価 / 継続的評価 / 対話 / カンファランス / 理解方略 / 理解の成果 / マインドセット / 称賛する見方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、読むことの学習の中で教師と学習者とのあいだで営まれる対話過程に着目し、教育評価の視点から分析・考察を進めた。 本年度検討したのは、大きく以下の2つの問いについてである。1つめは、教師と学習者はどのような教育評価観をもつべきなのかというものである。2つめは、教育評価の視点から教師と学習者がどのように対話していくことがそうした教育評価観を適切に反映することにつながっていくのかというものである。 1つめの問いに関する検討では、学んだ結果について明らかにする総括的評価ばかりが注目されることなく、学びが生まれ深まっていく過程を支える形成的評価がより重視されているということが明らかになった。また、教師が「欠点探しをする見方」をもとに見とり関わっていくのではなく、「称賛する見方」をもとに見とり関わっていくこと、また学習者の「長所を足場とする」ような見とりや関わり方をすることが重要であると考えられているということが明らかになった。2つめの問いに関する検討では、教師と学習者との対話を教育評価の核と位置づけるカンファランスと呼ばれる方法を用いることが有効な手段のひとつとなるということが示唆された。そして、そこで、力量のある教師たちは、学習者と協働的にこれまでの取り組みについて振り返り、今後を見通していく際に、学習者が使用した理解方略や、そのことで得られた理解の成果、さらには学習者の読書行為の推進を支えるマインドセットについて取り上げながら対話を重ねていくことによって、学習者の読みの力と自立心をよりゆたかに育んでいこうとしているということが見えてきた。 これら2つの問いに関する検討を行うことで、本研究において対話を核とした読むことの教育評価についてさらに探究していくうえで必要な基礎的な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初大きく3つのことを計画していた。1つめは対話を核とした読むことの教育評価の理論的な枠組みの構築である。2つめは、対話を核とした読むことの教育評価を実践していくうえで必要な教師の専門的力量の解明である。3つめは、対話を核とした読むことの教育評価の実行可能性について検討するための基礎資料の収集である。このうち3つめの基礎資料の収集に関しては準備を進めていたものの、新型コロナウィルス感染症の蔓延により実際に着手することはできなかった。一方で、1つめの理論的な枠組みの構築と2つめの教師の専門的力量の解明に関しては、当初の予定よりも範囲を広げながら文献調査に取り組むことができ、その結果、幾分かではあるが当初期待していた以上の成果をあげることができたと考える。また、これらの研究成果の一部に関しては、すでに研究代表者が所属する全国大学国語教育学会と日本教科教育学会において発表し、論文にまとめることができた。 これらの点を踏まえ、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断することができると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、本年度の成果を踏まえつつ、2つの方向で研究を進める予定である。1つめの方向は、本年度取り組んだ理論的な枠組みをさらに精緻化していくとともに、そこで求められる教師の専門的力量についてより多くのことを解明し構造化していくことである。2つめの方向は、1つめの理論的な検討を踏まえながら、より実行可能な方法を考案するとともに、そこで必要となるツールを開発していくことである。ただし、現在のところ、新型コロナウィルス感染症の蔓延という状況が続いているということを考えると、研究が予定通り進められない状況も予想される。その場合には、理論的な検討・考察の対象範囲を広げることで、より効果的な読むことの対話を核とした教育評価を実現していくための方策を明らかにしていくことができるように努めていきたい。
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