2020 Fiscal Year Research-status Report

高等教育における留学生のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因についての研究

Research Project

Project/Area Number	20K14041
Research Institution	Kyoto Tachibana University
Principal Investigator	菱田一仁京都橘大学, 健康科学部, 助教C (70817246)
Project Period (FY)	2020-04-01 – 2022-03-31
Keywords	留学生 / メンタルヘルス / 文化差 / 適応
Outline of Annual Research Achievements	2020年度は、新型コロナウイルスの影響で留学生のメンタルヘルスに関して、通常とは大きく異なった状態が発生していると考えられた。本研究は、今後の長期的な視点で留学生のメンタルヘルスに影響を与える要因について検討しようというものであることから、2020年度には主に文献を収集し、これまでに国内外で留学生のメンタルヘルスに関して行われている研究についての情報を集め、理解を深めることを中心に行っていた。その中で、近年海外において研究は、適応という観点のみではなく、研究におけるストレスや周囲からのサポートなどに影響を受けていることが明らかになり、研究実施者の問題意識と重なる部分を確認した。また、同時に他の国と異なる日本の特徴について、文献的に明らかにすることにも焦点を当てて文献を検討してきた。その中で、人間関係のあり方が欧米の個同士が関わりを持つと考える人間関係と、集合的な家族関係などが強調される東南アジア諸国などに比べ、その間で揺れているような日本のあり方について検討してきた。そうした人間関係は、個を重視すると孤独につながり、集合的なあり方を重視するとアイデンティティを築くことに苦しみを感じることがあることから、そうした人間関係ののあり方は、留学生たちが直面してる困難さに繋がっている他、留学生たちが母国を離れて学ぶ、生活することを志す要因にもつながっていることが検討された。 2020年の後半には、新型コロナウイルスの影響が短期間では終わらないことが明らかになってきたこともあり、実際の調査を行う準備を行ってきた。倫理委員会への書類を作成し、関係者に了承を得て、倫理審査を受けるところである。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 予定よりも計画が遅れたのは、主に新型コロナウイルスの影響と、研究実施者自身が他の研究機関に移動したことによる。新型コロナウイルスの影響としては、①国際的な往来が困難になったことから、研究を行う予定であった大学においても留学生の数が少なくなってしまった問題が挙げられる。②対面式のインタビュー形式での調査を予定していたことから、対面が困難になったことで調査を実施することが困難だと考えられた。この点については、Zoomなどのオンラインミーティングが一般的になり、調査においても使用することが方法論的に認められると考えられるようになったことから、解消してきていると考えられる。③新型コロナウイルスの影響を受けた生活を、今後の一般的な留学生のメンタルヘルスへの影響と同質のものとして議論することに疑義を感じた点も、研究の時期を遅らせた理由である。新型コロナウイルスによって、留学生は自宅での学習など、通常の状態とは大きく異なった状態に置かれたと言える。そうした事態そのものはストレスになることが容易に想像されるものの、今後の長期的な視点で留学生のメンタルヘルスへの支援を考えた際、そうした特殊な状況における結果をして、一般化することに疑義を感じたためである。研究者自身が所属機関を移動した点について、2020年度の後半に次の所属先を探していたが、なかなか決まらないという現実的な問題が発生し、その期間研究に充てることが出来たはずの時間を所属機関を探すことに充ててしまった。
Strategy for Future Research Activity	現在、新しい研究機関において倫理申請を行うところである。倫理申請が採用され次第、実際に調査を行うように、場所については確保している。調査は対面、もしくはZoomを用いたインタビュー形式で行う予定である。実施時期は7月から9月ごろを予定しており、インタビュー終了後には文字起こしをしたデータを質的分析法の手続きに従って分析し、年内には論文化して投稿を予定している。
Causes of Carryover	2020年度には、新型コロナウイルスの影響が大きく、予定していた調査を行うことが出来なかった。差額が生じた理由は、インタビューデータを文字起こしを依頼する分の金額であった。2021年度には当初の予定を少し遅らせる形でインタビューを実施する予定である。そのため、2021年度に、2020年度に予定していたインタビューの文字起こしなどのために繰り越しをしていた分の予算を使用する予定である。