2020 Fiscal Year Research-status Report
自閉症児の災害支援ニーズに関する検討~福島の原発事故後の親子の実態調査から~
Project/Area Number |
20K14045
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
川島 慶子 福島大学, 子どものメンタルヘルス支援事業推進室, 研究員 (10773939)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 災害支援 / 保護者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、被災した自閉スペクトラム症の特性及び重症度と災害時の支援ニーズとの関連について検討し、災害時の自閉症支援に役立つツール(支援ニーズ把握のための質問紙)について検討することを目的とする。 今年度は、東日本大震災後の原発事故による影響から現在も避難中または避難を経て帰還した住民であり、かつ自閉スペクトラム症の特性を有する子どもの保護者を対象に、予備的調査として質問紙調査(避難状況、保護者のメンタルヘルス、子どもの強さと困難さに関するアンケート)を実施した。その結果、33名から回答を得ており、有効回答は31名であった。対象児の年齢は2歳から7歳、回答者は全て母親であった。両親またはいずれか一方が原発事故による影響から避難生活を経験しており、対象の93%が震災前居住地の近隣市町村に避難生活を継続している状況であった。震災後に生まれた子どもは避難生活が日常であるなど、原発事故による避難の特殊性がうかがえた。こうした生活状況において、どのような支援を必要としているのか、発災直後だけではなく中長期的な避難における支援内容の検討を行う必要があることも明らかとなった。次年度は、質問紙に回答をいただいた方に対して直接面接またはオンラインでの面接を実施すると共に、保護者の同意の下、子どもの行動観察等を行い発達障害特性の重症度や日常生活における支援ニーズについて実態把握を行う。その後、保護者と子ども両方の実態を踏まえ、災害時の発達障害支援のニーズ把握のための質問紙(ツール)について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の1年目は、東日本大震災後の原発事故により避難経験をした、または避難中の自閉スペクトラム症の子どもの保護者を対象として、インタビュー調査及び子どもの行動観察を行い、避難中の子どもの支援に関する質問紙作成に向けた実態把握を行う予定であった。しかしながら、コロナ感染症の影響により、対象者のリクルートのための関係機関への直接訪問や対面式でのインタビュー調査(個別面接)の実施が困難となり、計画の変更を行ったため進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の前半(5月~9月)は、予備調査(質問紙)の結果を踏まえ、1年目に実施予定であった保護者へのインタビュー調査及び子どもの行動観察を対象者20名に実施する。調査の実施においては、コロナ感染症の予防対策を十分に行うと共に、保護者に対するインタビュー調査(個別面接)にはオンライン方式を導入する。子どもの行動観察は、保護者の同意の下、療育機関や学校の担当者または担任に質問紙での回答を依頼する。 後半(10月~12月)は、災害時の自閉症支援に関する質問紙の作成と実施を行う。対象群80名と比較対照群80名に実施する。関係機関(療育機関、学校等)の協力を得て、質問紙の配布回収を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、コロナ感染症の影響により、20組の親子を対象とする調査(対面での保護者へのインタビュー調査、子どもの行動観察等)の実施が困難となったことから、計画を変更して予備的調査(質問紙)に留めた。そのため、進捗状況が遅れ次年度使用額が発生した。 次年度は、コロナ感染症予防対策を十分に行うと共にオンライン形式を取り入れ、当初予定していた20組の親子へのインタビュー調査等を実施する。また、2年目に計画していた対象群と比較対照群(各80名)への質問紙調査も予定通り実施する。実施時期は遅れるものの、2年間の中で行われる研究内容に大きな変更はないことから、当初の計画通りに研究費を使用する予定である。
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