2021 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児の実行機能特性の解明と教育的支援モデルの構築に関する認知神経科学的研究
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20K14048
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
池田 吉史 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (20733405)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 実行機能 / 知的機能 / 適応行動 / 抑制 / 認知トレーニング / 知的障害 / 認知制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、実行機能に基づく教育的支援モデルの検証に取り組んだ。前年度の研究より、知的障害児・者における実行機能の強みと弱みが明らかとなり、さらにそれらと適応行動との関連が明らかとなった。知的障害児・者の適応行動を高めることが自立と社会参加を促進することにつながるため、実行機能特性に基づく適応行動の教育的支援方法を考案・検証することを目的とした。 実行機能の支援アプローチとして、下記の2つが想定される。一方は「実行機能を高める支援」である。知的障害生徒を対象として、実行機能のトレーニング効果について検証を行う。他方は「実行機能を補う支援」である。例えば、家庭で宿題に取り組む計画を立てるワークシートや手順を示した手順表等の実行機能の補助ツールを用いることで、宿題に取り組むという適応行動の効率がいかに高められるかについて検証を行う。このうち、本年度は実行機能を高める支援に取り組んだ。 本研究は、知的障害特別支援学校に在籍する知的障害児1名とダウン症児1名を対象に,抑制の一つである順向性制御・反応性制御を高める認知トレーニングを実施し、その効果を検証することを目的とした。本研究の結果から、知的障害児とダウン症児において、著しいトレーニング効果は見られないことが示唆された。しかしながら、反応時間の詳細な分析により、知的障害児とダウン症児においても反応性制御から順向性制御へシフトする傾向があることを明らかとなった。これらの結果は、知的障害のある生徒の抑制に対するアプローチに、認知トレーニングという新たな視座をもたらす貴重な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に予定していた研究2「行動・生理指標に基づく実行機能の特性解明」が多くの対象者を必要とするが、感染症の影響のためにフィールド確保が難しく、研究2の実施を見送らざるを得なかった。しかし、令和4年度に予定していた研究3「実行機能に基づく教育的支援モデルの検証」の前半部を前倒しで実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、研究3「実行機能に基づく教育的支援モデルの検証」の後半部を実施するとともに、令和5年度に向けて、研究2「行動・生理指標に基づく実行機能の特性解明」の準備を行う。
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Research Products
(9 results)