2021 Fiscal Year Research-status Report
場面緘黙の専門資源へのアクセスが難しい地域における遠隔支援の検討
Project/Area Number |
20K14049
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 真衣子 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (60824919)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 場面緘黙 / コンサルテーション / 行動療法 / 段階的エクスポージャー / 遠隔支援 / 連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
場面緘黙の治療には集中的かつ積極的な介入が必要であるが、対応可能な専門機関は限られており、地理的時間的な制約から来談が困難なケースも多い。本研究では、保護者や教師を対象に遠隔コンサルテーションを実施し、居住地に関係なく同質の支援を提供する方法を検討することを目的とする。 2021年度は、小学生3名、中学生1名を対象に遠隔または学校訪問によるコンサルテーションにより、段階的エクスポージャーを基本とする支援を実施した。このうち支援終了につながった中学生1名に対し、本人・保護者・教師へのインタビューを行い、支援内容や方法の妥当性を検討した。 インタビューの結果、本人はエクスポージャー課題に対して肯定的に受け止めており、学校において毎週スモールステップでチャレンジする取組を行ってよかったことが報告された。保護者からは支援効果は高く評価された一方、実施負担は少なくない(教師と支援者との仲介役、支援者と毎週の計画立案、自身の仕事との両立)ことが報告された。教師からは実施負担はなかった上に効果が高かったこと、学校の教育目的を阻害するものではなかったこと、教師だけでは術がわからなかったので専門家とつながる意味を感じたことが報告された。 一方で、支援継続中のケースの中には、自閉スペクトラム症などの併存症や不登校などの二次的問題があったり、担任教諭もしくは保護者の理解が得られず連携に困難を示したりするものもあり、個々の状況に応じてアプローチを検討する必要がある。 対象者のうち2名の経過を日本特殊教育学会第59回大会において、口頭発表とシンポジウムでそれぞれ発表した。コンサルテーションシステムを用いた学校におけるエクスポージャー課題の有効性が評価された。また、発話のみでなく、活動参加や対人交流の広がり、登校支援にも有効な方法であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、学校・家庭と連携して遠隔コンサルテーションシステムを構築し、運用できている。複数の実践事例をとおして、システムとして機能するための共通事項や課題も整理されつつある。発話につながり支援が終了したケースにおいては、本人・保護者・教師へフォローアップ調査を実施し、対象児本人の抵抗感および教師の負担感は低く、発話への効果が高い方法であることが示された。子ども個々の症状、家庭の協力度、学校の支援体制の違いを踏まえて連携上の課題を整理し、より有効に機能する方法を検討していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画のとおり、支援終了ケースにおいては本人・保護者・教師へのフォローアップ調査を順次実施し、各立場からの良点・改善点をまとめる。継続ケースにおいては、一部研究成果に基づき微修正を加えながら、コンサルテーションシステムによる支援を実施する。 また、研究経過の報告として、日本特殊教育学会第60回大会(2022年9月)において発表を行う。
|
Causes of Carryover |
参加・発表を予定していた学会の年次大会がオンライン開催となり、旅費が発生しなかった。2022年度はフォローアップ調査および国内の研究機関や支援機関との研究交流・情報交換として使用する。
|
Research Products
(2 results)