2023 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症児における対人相互作用の工学デバイスを活用した評価と支援研究
Project/Area Number |
20K14071
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
塚本 匡 専修大学, 人間科学部, 講師 (90838773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心理学 / 工学 / RTK-GNSS / 対人距離 / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では発達支援における工学デバイスの有用性に注目し、その活用によって子どもの対人相互作用の定量的な評価や自閉スペクトラム症のある子どもへの有効な支援を確立することを目指してきた。本研究はもともと屋内環境を研究フィールドとする予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、屋外環境へと場所を移して、対人相互作用の評価研究を進めてきた。 令和5年度は、前年度に引き続き、本研究の実施のために開発した位置情報計測装置(RTK-GNSS)を用いて屋外における計測実験とこれまでの成果の発表を行った。定型発達の子どもとその保護者を対象に、公園における構造化された遊びや自由遊びの最中の位置情報を計測し、それに基づいて算出された対人距離を直接観察によって得られた行動データと比較した。その結果、開発したデバイスは10cm程度の誤差で位置情報を同定できる非常に正確性と信頼性の高いものであり、またそれによって算出された対人距離は、親子の接近行動や回避行動とも関連することが認められた。これらの成果の一部は、日本行動分析学会の年次大会とヒューマンインタフェース学会の論文誌で発表された。 研究期間全体を通じて、工学デバイスは時間経過に伴う対人相互作用の変化を自動的かつ簡便に知ることができるという点で有用性が高く、特にRTK-GNSSは屋外環境における子どもの対人相互作用を評価する上で、有用なデバイスとなりうることが確認された。ただし、RTK-GNSS単独では顔の向きや会話の様子、周囲の環境などを記録に残すことができず、対人相互作用の指標としては課題も残された。また、先端的な工学デバイスを特別支援教育や発達支援に用いる場合のリスクについては十分に検討できておらず、倫理的かつ責任のある研究並びに実践を行うため新たな課題が明らかになった。
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