2023 Fiscal Year Annual Research Report
Japanese view of the world after death
Project/Area Number |
20K14126
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
白岩 祐子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40749636)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死後世界観 / 霊魂観念 / afterlife image / life after deaath / 臓器提供 / 司法解剖 / 死者儀礼 / 未帰還遺骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1)一神教文化圏のみならず,国内人文学の知見もふまえた網羅的な死後世界観(afterlife belief)を構造化し,2)それら各因子が臓器移植や解剖などの社会制度,あるいは葬送・供養をはじめとする死の作法や慣習に影響していることを示し,かつ,3)社会秩序の実現など,死後世界観の機能を明らかにすることであった。 1)について申請者は,日本人を対象とする大切な故人(2人称の死者)の死後イメージ尺度をはじめて開発・標準化し,大切な故人の死後世界は,「魂との共生」,「良き他界」,「生まれ変わり」,「大きな存在への統合」,「記憶・記録」という5因子構造をもつことを明らかにした(白岩, 2023)。 2)について,1)で開発した尺度の下位因子が,司法解剖の拒否・臓器提供の拒否,臓器提供に意味を見いだす強度(白岩, 2023),および死者儀礼(故人の墓地へのお参りや故人に向けたお供え)の頻度(白岩, 2024)と,それぞれ独自に関連することを明らかにした。さらに,ご遺体・ご遺骨が遺族のもとに帰還しなかった場合,遺族の抱く上記5因子のイメージ強度に差はみられないものの,「故人(の魂)はまだ没地にいる」という固有の死後世界観が強まることを,十五年戦争における国外戦没者のうち遺骨が未帰還となっている方のご遺族に対する調査から明らかにした(執筆中)。 以上の結果は概して予測に沿ったものであったが,3)については予測と異なる結果を得た。当初,死後世界観の補償的機能を想定し,大切な故人の夭折・早世(心残りのある人生)が死後世界観をもたらすと予測したが,そうではなく,むしろ心残りのない人生が死後世界観と関連するという,現世の延長としての死後世界の役割が明らかになった(白岩,2023)。この結果は,本研究に協力した遺族の多くが平穏な死別を経験した人びとであったことによると考えられる。
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