2022 Fiscal Year Research-status Report
「言外の意味」はどのように慣習化されるのか:相互強化に基づく意味の共有過程の検討
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20K14131
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平川 真 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 講師 (50758133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 間接的要求 / 言外の意味 / 解釈についての信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、言外の意味を用いたコミュニケーションの例として、間接的要求をとりあげ、聞き手の解釈について話し手がもつ信念(以下、解釈についての信念)に着目して、コミュニケーションの成立について検討するものである。 2022年度は、解釈についての信念を測定し、実際の解釈率とのずれを評価した。解釈についての信念とは、たとえば「冷房をつけて」という要求の意味で「この部屋暑いね」と発話した際に、「聞き手は冷房をつけてと理解するだろう」と考えることに相当し、自分の発話に対する聞き手の解釈についての信念を指す。この解釈についての信念を、呈示した会話20場面それぞれについて「そのように解釈する人は世間一般にどれくらいいると思いますか」と%を評価してもらうことで測定した。なお、呈示した会話場面については、2021年度に実際の解釈率、すなわち、その会話場面でなされている間接的要求を要求として解釈する比率を得ている。 各会話場面について、「解釈についての信念」の平均値と「実際の解釈率」の相関係数を求めたところ、両者の相関はr = .98であり、「解釈についての信念」と「実際の解釈率」には、強い関連があることが明らかとなった。一方で、「解釈についての信念」と「実際の解釈率」は系統的なズレがあり、実際の解釈率が低い場面ではその慣習性が過大評価され、実際の解釈率が高い場面では過小評価されることが明らかとなった。 ただし、この系統的なズレについては、解釈についての信念の測定方法によって生じている可能性がある。具体的には、参加者は各場面において、「要求の意味を解釈する人の比率」について、必ず答えるよう求められており、「わからない」と判断した場合にを参加者が表明できるように設計されていなかった。わからない場合に50%を選ぶことによって、この系統的なズレが生じている可能性が考えられるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度、2021年度に、新型コロナウィルス感染拡大による通常以上の業務が発生したため、エフォートを予定通りに割くことができていない。2022年度は、解釈についての信念のずれについて検討を行うことができたが、当初の予定に比べれば進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に取得したデータの解析を行い、解釈についての信念のズレについて個人レベルの検討を行う。また、解釈についての期待と聞き手の反応が異なっていた場合の話し手の認知・感情・行動意図について検討を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度および2021年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大によって、例年と異なる急な対応が必要な業務が発生したため、エフォートを予定通りに割くことができず、それぞれの年度で次年度使用額が発生した。 2022年度は、解釈についての信念と実際の解釈率とのずれについて検討を行い、予定していた研究を実施することができたが、2020年度から発生している次年度使用額の消化には至らなかった。また、学会の年次大会への参加・発表等で旅費による使用を見込んでいたが、一部の学会の参加については、オンラインでの参加となったため、旅費の支出がなかった。 次年度使用額については、計画していて実施が遅れている調査の実施費として使用する。 2023年度分の予算は、当初の計画を進めるために使用する。
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