2023 Fiscal Year Research-status Report
「言外の意味」はどのように慣習化されるのか:相互強化に基づく意味の共有過程の検討
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20K14131
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平川 真 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 講師 (50758133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 間接的要求 / 言外の意味 / 解釈についての信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、言外の意味を用いたコミュニケーションの例として、間接的要求をとりあげ、聞き手の解釈について話し手がもつ信念(以下、解釈についての信念)に着目して、コミュニケーションの成立について検討するものである。 2023年度は、2022年度に取得したデータに基づいて、解釈についての信念と要求解釈傾向との関連を検討した。解釈についての信念とは、たとえば「冷房をつけて」という要求の意味で「この部屋暑いね」と発話した際に、「聞き手は冷房をつけてと理解するだろう」と考えることに相当し、自分の発話に対する聞き手の解釈についての信念を指す。要求解釈傾向とは、個人がある発話を要求として解釈しやすい傾向を指す。 2022年度の検討において、解釈についての信念の平均値は実際の解釈率とr = .98で強く相関しており、集団レベルでは実際の慣習性と慣習性の認識が強く関連していることが示された。一方で、解釈についての信念の大きさは個人によって異なるため、個人レベルで解釈についての信念と関連している変数として要求解釈傾向に注目し、その関連を検討した。 検討した会話場面20場面のうち19場面で、慣習性についての個人的な認識は、個人の要求解釈傾向と中程度に正相関することが示された (20場面での相関係数の平均は.30)。すなわち、要求の意味を解釈しやすい個人は、そうでない個人と比べて、その発話を要求として解釈する他者の割合を多く見積もりやすいことが明らかとなった。唯一、両者の関連が認められなかった場面は、実際の慣習性が91%と高い場面であった。これに関連して、直接的要求がなされる場面では慣習性の認識と解釈傾向の関連は認められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度、2021年度において、新型コロナウィルス感染拡大による通常以上の業務が発生したため、エフォートを予定通りに割くことができていなかった。 2023年度は、解釈についての信念について、個人レベルの変数との関連を検討することができたが、当初の予定に比べれば進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、聞き手の解釈に対する話し手のフィードバック過程について検討する。具体的には、要求解釈についての期待をもつ状況において、聞き手が要求解釈を採用しない場合に、その状況を話し手がどのように評価するのかをシナリオ法を用いたweb実験によって検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度および2021年度に、新型コロナウィルス感染拡大によって、例年と異なる急な対応が必要な業務が発生したため、エフォートを予定通りに割くことができず、それぞれの年度で次年度使用額が発生していた。 2023年度は、2022年度に取得したデータを分析することによって、解釈についての信念と要求解釈傾向についての個人レベルの関連を検討することができたが、新しくデータを取得せず、2020年度から発生している次年度使用額の消化には至らなかった。 全体として進捗が遅れているため、補助事業期間を1年延長した。次年度使用額については、主に実施が遅れている調査の実施費として使用する。
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