2021 Fiscal Year Research-status Report
punishment to solve social dilemmas causes chain of intergroup retaliation
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20K14137
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小野田 竜一 大東文化大学, 社会学部, 講師 (40791546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 協力 / 代理報復 / サンクション / 報復罰 / 集団間紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
集団の協力問題は社会的ジレンマと呼ばれ、解決法として罰制度の導入が提案されている。罰制度の導入により、非協力者に罰を与え、非協力者の利益を下げることで、非協力行動を抑制できる。そのため、非協力者への罰行動は、SDを解決する向社会的行動とされる(Fehr & Gachter, 2002)。しかし、他者の利益を下げる罰行動は、攻撃的なスパイト行動(意地悪行動)に見られることもある。ここで、集団内のSDの非協力者に対して外集団の個人による罰行動が攻撃的行動に見られた場合には、被罰者と同集団の個人が、罰行使者や罰行使者と同集団の個人に報復行動(代理報復行動)をとることが予測される。本研究では、罰行動が代理報復行動を引き起こし、集団間の報復行動の連鎖のきっかけになることを特定する。 2021年度は実験を実施した。本実験は、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、代理報復行動が生じるのか否かを検討することを目的に行われた。本研究計画におけるメインの実証研究である。計149名の実験参加者は6人ずつの各セッションに分かれ、実験に参加した。実験では、参加者はまずPCにより他者との集団相互作用場面を経験し、様々な行動を決定した。その後、事後質問紙に回答した。実験の結果、微弱な代理報復行動自体は観られたが、統制条件に大きな問題があることが判明した。これは、実験条件と統制条件の比較を困難にさせ、実験結果に妥当性を担保することを難しくさせるため、非常に深刻な問題である。 2022年度には、本年度の実験で発見された大きな問題点を改善した実験を行い、本研究計画を遂行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度では、まず、実験実施準備、所属機関における実験室や実験参加者のリクルートシステム、実験実施体制等の環境を整備した。 具体的には、Visual Studio 2019による実験用プログラムの開発を行い、通信用のネットワークの整備などを行った。その後、実験者IDを記載するカードや同意書入れなどの実験用具、個人情報の流布を防ぐための衝立、アルコール消毒液などの新型コロナウイルスへの対策用品、マウスや電源タップなどのPC周辺機器、実験費を保護するための金庫などを購入し、実験室を整備・構築した。また、参加者をリクルートするためのシステムを構築し、参加者が自ら実験に参加できるシステムを作った。その後、所属機関の倫理審査委員会への許諾を得たうえで実験を実施した。 実験は、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、代理報復行動が生じるのか否かを検討する実験を行った。本実験は、本研究計画におけるメインの実証研究となる。新型コロナウイルスの影響があったにも関わらず、研究計画におけるメインである実証実験を実施できたことは大きい。今後の課題も明確となったために、研究計画を大きく前進させることもできた。そのため、当初の計画以上とは言えないまでも、「おおむねに順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、2021年度の実験で発見された大きな問題点を改善し、さらに条件を1つ増やした実験を行い、本研究計画におけるメインの実証研究を継続する予定である。2021年度の実験を改良して実施するため、実施自体には大きな問題はないと予想される。 実験の目的は、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、代理報復行動が生じるのか否かを検討することであり、本研究計画におけるメインの実証研究となる。実験デザインとして、外集団の個人による罰行動が生じる条件、内集団の個人による罰行動が生じる条件、罰行動が生じない条件の3条件の結果を比較する。これにより、外集団の個人による罰行動がどのような現象を引き起こすのかを明確にできるだろう。 しかし、実験データを集めるためには、少なくとも6~8人程度は一度に実験室に参集してもらう必要がある。また、条件を増やしたことにより、30セッションほど行う必要があり、2021年度よりも大規模な実験になる。従って、新型コロナウイルスの影響により、研究が停滞する可能性もあると考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度では、まず、実験実施準備、所属機関における実験室や実験参加者のリクルートシステム、実験実施体制等の環境を整備した。また、本研究計画におけるメインの実証研究である実験室実験を実施した。しかし、本年度のコロナウイルスの関係があり、当初計画していた実験ほど大規模な実験ができなかったり、参加する予定の研究会や学会がすべてオンライン開催となったため、使用額が少なく、次年度使用額が生じた。 2022年度には、2021年度よりも大規模な実験を予定しており、2021年度よりも大きな予算が必要となるだろう。また、一部の学会は対面開催となる予定である。
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