2022 Fiscal Year Research-status Report
punishment to solve social dilemmas causes chain of intergroup retaliation
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20K14137
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小野田 竜一 大東文化大学, 社会学部, 講師 (40791546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 協力 / 代理報復 / サンクション / 報復罰 / 集団間紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
集団の協力問題は社会的ジレンマと呼ばれ、解決法として罰制度の導入が提案されている。罰制度の導入により、非協力者に罰を与え、非協力者の利益を下げることで、非協力行動を抑制できる。そのため、非協力者への罰行動は、SDを解決する向社会的行動とされる(Fehr & Gachter, 2002)。しかし、他者の利益を下げる罰行動は、攻撃的なスパイト行動(意地悪行動)に見られることもある。ここで、集団内のSDの非協力者に対して外集団の個人による罰行動が攻撃的行動に見られた場合には、被罰者と同集団の個人が、罰行使者や罰行使者と同集団の個人に報復行動(代理報復行動)をとることが予測される。本研究では、罰行動が代理報復行動を引き起こし、集団間の報復行動の連鎖のきっかけになることを特定する。 2022年度には実験を実施した。本実験では、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、代理報復行動を引き起こすか否かとその心理的背景を特定した。本研究計画におけるメインの実証研究である。計94名の実験参加者は、実験条件もしくは統制条件のいずれかに割り当てられ、6人ずつの各セッションに分かれ、実験に参加した。実験では、参加者はまずPCにより他者との集団相互作用場面を経験し、様々な行動を決定した。その後、事後質問紙に回答した。実験の結果、外集団の罰行使者に対して、被罰者と同集団の個人による代理的な報復行動が生じたことが示された。さらに「外集団全体への恐れ」が「外集団への罰に対する内集団成員からの賞賛獲得平均」に影響を与え、「外集団全体への報復動機付け」へと繋がり「報復行動」を引き起こすという心理的背景を特定した。本研究は、集団間の代理的な報復行動という負の集団現象を罰行動が引き起こすことを発見したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度では、まず、実験実施準備、所属機関における実験室や実験参加者のリクルートシステム、実験実施体制等の環境を整備した。 具体的には、Visual Studio 2019による実験用プログラムの開発を行い、通信用のネットワークの整備などを行った。その後、2021年度に購入した、同意書入れなどの実験用具、個人情報の流布を防ぐための衝立、マウスや電源タップなどのPC周辺機器、実験費を保護するための金庫などに加え、実験者IDを記載するカードやアルコール消毒液などを新たに購入し、実験室を整備・構築した。その後、所属機関の倫理審査委員会への許諾を得たうえで実験を実施した。 実験は、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、代理報復行動が生じるのか否かを検討する実験を行った。本実験は、本研究計画におけるメインの実証研究となる。新型コロナウイルスの影響があったにも関わらず、研究計画におけるメインである実証実験を実施でき、大きな研究成果を得た。そのため、「おおむねに順調に進展している」としている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対する外集団の個人による罰行動の印象を探る実験室実験と質問紙実験を行う予定である。 この実験の目的は、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときに、その罰行動、並びに罰行使者の印象を比較検討することである。そのための実験デザインとして、外集団の個人による罰行動が生じる条件(外集団の個人によって、集団内の社会的ジレンマの非協力者が罰される状況)、外集団の個人による攻撃行動が生じる条件(集団内の個人が攻撃される状況)、内集団の個人による罰行動が生じる条件(内集団の個人によって、集団内の社会的ジレンマの非協力者が罰される状況)の3条件の結果を比較する。条件差をみることにより、集団内の社会的ジレンマの非協力者に対する外集団の個人による罰行動の印象を特定することができる。また、同じ目的・同じデザインを採用した実験室実験と質問紙実験の2つの研究を実施するマルチメソッドアプローチを使用して、当該罰行動の印象を特定する。 しかし、実験データを集めるためには、少なくとも6~8人程度は一度に実験室に参集してもらう必要がある。また、条件を増やしたことにより、30セッションほど行う必要があり、2022年度よりも大規模な実験になる。従って、新型コロナウイルスの影響により、研究が停滞する可能性もあると考えている。 また、2022年度の研究成果を国内外の学会において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度では、まず、実験実施準備、実験実施体制等の環境を整備した。また、本研究計画におけるメインの実証研究である実験室実験を実施した。しかし、本年度のコロナウイルスの関係があり、当初計画していた実験ほど大規模な実験ができなかったため、使用額が少なく、次年度使用額が生じた。 また、2021年度に行った実験に問題があったこともあり、学会報告などに支障を来したことも大きく影響した。 2023年度には、2022年度よりも大規模な実験を予定しており、2022年度よりも大きな予算が必要となるだろう。また、2022年度の成果を国内外の学会にて発表する予定であるため、その分の予算も必要となる。
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