2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白井 真理子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 助教 (70802271)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 悲しみ / 身体表出 / オノマトペ / 泣き / コミュニティ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,悲しみに適した身体表出を実際に“身体を使って表出を促す”ことによる,悲しみの低減効果を検証するため,身体表出の運動パターンに新たに着目し,悲しみ場面との関連性がどのように記憶されているのかを明らかにすることを目的としている。一連の研究により,場面の要素も考慮した,身体表出と悲しみの関連が明らかとなれば,身近な人を喪う深い悲しみに対しても,表出を促すことで,早期低減を実現できる可能性があり,臨床的意義も大きいと考えられる。 本年度は,身体表出特徴と悲しみ関連語である泣きのオノマトペとの関連を調べることで,身体表出と言語表出の関連を検討した。大学生48名による身体表出画像と泣きオノマトペとの適合性評価をもとに,コミュニティ分析により身体表出をグループ化した。結果、目の周辺や顔全体に手が置かれた身体表出が、姿勢の違いに関わらず、泣きオノマトペの適合度が高いグループを形成した。一方、そのグループ内部では、姿勢の活性度の違いによりオノマトペの適合度が変化した。つまり,目や顔の周りの手の位置は,泣きを典型的に表現するため,優位特徴として働き,姿勢の傾きは,泣きのオノマトペの活性度を区別する下位特徴として機能する。これらの結果は、悲しみ概念を構成する身体表出特徴と言語特徴の間には階層的な対応関係があり,その対応関係に基づき悲しみの概念表現が成立していることを示唆している。この結果は,第85回の日本心理学会で発表し,特別優秀発表賞を受賞した。また,結果を論文にまとめ,現在投稿中である。 加えて,悲しみそのものの特徴をより詳細に明らかにするため,幅広い世代に対して悲しみエピソードの特徴を検討する調査を実施した。20代~70代を対象に,今までに最も悲しみを感じたエピソードについて自由記述を収集した。現在,世代を超えて共通する特性と各世代で異なる特性を明らかにするための分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,悲しみと身体表出の関連という研究計画の基礎となる研究が実施できた。またその結果について,学会発表を行うことができた。したがって,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として,悲しみの身体表出特徴と悲しみ喚起場面との関連をより詳細に明らかにする実験研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,社会情勢により学会が延期やオンライン開催になったため,学会参加旅費が予定よりも少なくなったことが挙げられる。また,申請者の異動に伴い,実験環境を設定するために時間がかかった。次年度は,新たな実験実施を予定しているため,その実施にかかる費用としての使用を予定している。
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