2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白井 真理子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 助教 (70802271)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 悲しみ / 身体表出 / 泣き / オノマトペ / ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,悲しみに適した身体表出を実際に“身体を使って表出を促す”ことによる,悲しみの低減効果を検証するため,身体表出の運動パターンに新たに着目し,悲しみ場面との関連性がどのように記憶されているのかを明らかにすることを目的としている。 22年度は,身体的表出と言語表出(悲しみ関連語である泣きのオノマトペ)の関連性について検討した結果を学術論文誌に掲載した。具体的には,悲しみ概念を構成する身体表出特徴と言語特徴の間には階層的な対応関係があり,その対応関係に基づき悲しみの概念表現が成立していることが示唆されたという内容であった。 また,悲しみそのものの特徴をより詳細に明らかにするため,20代から70代に対して悲しみエピソードの特徴を検討する調査を実施した。その結果,世代が上がると「出現頻度が増える」タイプ(e.g., 両親,死,病気)と「出現頻度が減る」タイプ(e.g.,祖父母,自分,失敗)に分類され,世代が上がると悲しみエピソードを構成する内容が変化することが示唆された。悲しみエピソード記憶のネットワーク構造に関しては,世代が上がるほど特定語彙にその他の語彙との関係性が集中する傾向を示した。つまり,世代が上がるにつれて,悲しみのエピソード記憶の内容と構造が変化する可能性が示された。この結果は,第86回の日本心理学会で発表し,現在論文を執筆中である。 加えて,悲しみの場面と特定の身体表出および泣きのオノマトペとの関連から示された知見を踏まえ,泣き方という表出形態が,被表出者に及ぼす影響についても調査を行った。その結果,静的な泣き(しくしく,ほろりほろりと涙する)は,動的な泣き(えーんえーん,わーんわーんと涙する)よりも,ソーシャルサポート意図が高く評価されることが示された。この結果は,23年度の学会で発表する予定であり,現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度は,悲しみと身体表出の関連という研究計画の基礎となる研究について,論文にまとめることができた。また悲しみの特徴や表出形態が及ぼす影響についての調査を実施した結果について,学会発表を行ことができた。したがって,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として,悲しみの身体表出特徴と悲しみ喚起場面との関連をより詳細に明らかにする実験研究を行う予定である。具体的には,参加者に身体的表出を作成させ,その特徴傾向と個人特性を明らかにすることで,身体表出の運動パターンと悲しみ場面との関連性がどのように記憶されているのかをより詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,社会情勢により学会がオンライン開催になったため,学会参加旅費が予定よりも少なくなったことが挙げられる。また,22年度は申請者の事情により対面実験を行うことが難しかった。次年度は,新たな実験実施を予定しているため,その実施にかかる費用としての使用を予定している。
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Research Products
(3 results)