2020 Fiscal Year Research-status Report
セルフコンパッションが社会的排斥過程に及ぼす影響の検討
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20K14147
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
宮川 裕基 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (40845921)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルフコンパッション / 社会的排斥 / 対人目標 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
他者から無視されるなどの社会的排斥は個人の心身の健康やその他者との人間関係に悪影響を及ぼす。本研究では、自分を思いやることを意味するセルフコンパッション(SC)が社会的排斥を防ぎ、たとえ排斥が生じたとしてもその痛みを和らげる心理的メカニズムについて検討し、そのモデルを提唱することを目的とする。 今年度はセルフコンパッションと日常場面における排斥感との関連性を横断的調査により検討した研究を日本社会心理学会第61回大会において報告した。また、この研究ではセルフコンパッションを促進する要因として思いやり目標に着目した。思いやり目標の高い人は人間関係を相互に関連しあうシステムとして捉え、自分(他者)のニーズを満たすことが他者(自分)のニーズを満たすことに繋がると考えるとされる。本研究では、思いやり目標の高い人ほど、セルフコンパッションが高いため、日常生活における被排斥感が低いという一連の関連性を検討した。その結果、予測通り、思いやり目標がセルフコンパッションの高さを介して被排斥感の低さに関連していた。この結果から、思いやり目標やセルフコンパッションが高いことで日常生活における被排斥感が低くなることが示唆された。 また、今年度は、セルフコンパッションが社会的排斥後の不適応的反応としての攻撃性を防ぐ過程(研究2)の準備として、先行研究を精査し、攻撃性の行動指標の選択や社会的排斥場面に関するシナリオ場面の作成を行った。これらの準備を踏まえて、令和3年度は、社会的排斥後のセルフコンパッションの影響を検討する研究を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進展している。ただし、研究1(セルフコンパッションが日常生活における排斥感の低さと受容感の高さに及ぼす影響の検討)の当初計画では縦断調査を行う予定であったが、横断調査に切り替えた。これはコロナ禍において大学生を対象に縦断的にデータを収集することが困難であると判断したためである。今後、縦断調査によって、研究1のモデルの再現性を検討していく必要があると考えている。一方、研究2以降の社会的排斥場面におけるセルフコンパッションの影響に関する検討の事前準備は今年度行うことができ、令和3年度に研究2以降を確実に行うことができると考えている。このため、全体として当初の研究計画に基づいた研究を遂行できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度については、当初の研究計画及び令和2年度に実施した研究成果を踏まえて、研究2(セルフコンパッションと排斥場面における攻撃性の低さの関連の検討)及び研究3(セルフコンパッションと排斥場面における向社会性の高さの関連の検討)を実施していく。これらの研究を通して、セルフコンパッションの高い人ほど、社会的排斥を経験したとしても、他者に攻撃的にならずに、他者との関係を改善していこうとすることを示す。その際に、研究1で用いた思いやり目標の影響も加味していく。また、攻撃性は行動指標を用いる。令和3年度はこれらの研究実施とともに、得られた知見を国内外の学会で発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況で述べた通り、令和2年度は研究2の研究準備のみを行ったため、研究2を実施するための経費が未使用額として発生した。このため、令和3年度は研究2を実施するための研究費が必要となった。また、当初の予定通り、研究2の研究知見を国内外の学会発表や国際雑誌投稿に関わる研究費が必要となる。
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Research Products
(1 results)