2023 Fiscal Year Annual Research Report
セルフコンパッションが社会的排斥過程に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
20K14147
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
宮川 裕基 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (40845921)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルフ・コンパッション / 社会的排斥 / 対人目標 / レジリエンス / 攻撃性 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的排斥は個人の心身の健康や対人関係に悪影響を及ぼす。本研究では、自分を思いやることを意味するセルフコンパッション(SC)が社会的排斥を防ぎ、たとえ排斥が生じたとしてもその痛みを和らげる心理的メカニズムについて検討した。 2023年度では、(1)SCの高い人ほど社会的排斥経験が少ないのか、(2)社会的排斥時にSCを実験的に高めることによって心理的健康状態が保たれ、排斥してきた他者を過剰に避けないのかという2点について主に検討した。まず、2524名の参加者を対象に、SCと社会的排斥経験の頻度の関連を検討したところ、予測と一致して、SCの高い人ほど他者からの社会的排斥経験の頻度が少ないことが示された。また、社会的排斥が生じた場面におけるSCの役割については、578名の参加者をSC介入群と統制群に無作為に割り当てた実験法により検討した。その結果、統制群に比べて、SC介入群で、社会的排斥後の心理的健康状態が高く、排斥してきた相手への報復傾向ならびにその相手を過度に避ける傾向が低いことが示された。 本研究期間全体では以下の知見が明らかとなった。まず、SCの高い人ほど社会的排斥経験が少ないことである。また、仮に社会的排斥が生じたとしても、その場面においてSCを示すことによって、排斥してきた相手への攻撃性が低いことである。この点については、2021年度の調査法ならびに2022・2023年度の実験法によって確認された。さらに、本研究では特定の場面におけるSC(状態SC)を測定する尺度の開発やSCを高める実験法の妥当性の検証を行い、また状態SCの構造については日米において共通していることを示した。 以上より、SCが社会的排斥を未然に防ぐとともに、仮に社会的排斥を経験したとしても、自分を思いやることで自己の心理的健康が維持され、また他者との人間関係の更なる悪化を防げることが示唆された。
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Research Products
(5 results)