2020 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク分析の理論と項目反応理論の融合による新たなテスト理論の構築
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20K14152
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
登藤 直弥 筑波大学, 人間系, 助教 (70773711)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 項目反応理論 / 局所依存性 / ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に関しては、まず、本研究課題と関係の深い先行研究のレビューを行った。具体的には、ネットワーク分析について概説した論文群についての更なるレビューを行い(e.g., Hevey, 2018)、項目反応理論と関連の深い因子分析モデルとネットワーク分析との関係について検討した論文群についてもレビューを行った(e.g., van Bork et al., 2019)。その後、因子分析モデルにおける独自因子間相関とネットワーク分析との関係について検討した論文(Pan et al., 2017)や項目反応理論における局所依存性とネットワーク分析との関係について検討した論文(Chen et al, 2018)のレビューを行った。そのうえで、これらの研究の成果をふまえ、先行研究では未解決の問題点を解消する形で、項目反応間の局所依存関係をネットワーク分析の手法で探索し、表現する項目反応モデルについて検討した。具体的には、Chen et al. (2018) で提案されたFLaG-IRTモデルと呼ばれるモデルでは、項目反応間の局所依存性がネットワーク分析で用いられるモデルを用いて表現されているものの、例えば、各項目に正答または誤答する確率を表すモデルが項目反応理論の分析で一般的に用いられるモデルとは異なっており、このモデルを適用して得られた結果の比較可能性が担保されていなかったため、この比較が可能となるように、Pan et al. (2017) で利用されたベイジアンLassoと呼ばれる手法を活用し、項目反応間の局所依存関係をネットワーク分析の手法で探索して表現することが可能で、かつ結果の比較可能性も担保された項目反応モデルについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時には、2020年度の実施予定として、局所依存性を表現することのできるネットワークモデルへとIRTのモデルを拡張するにあたり、知識空間理論 (knowledge space theory)の考え方を利用し局所依存性をネットワークで表現しようと試みたNoventa et al. (2019) やベイジアンネットワークの考え方に基づいて同じく局所依存性をネットワークで表現しようと試みたUeno (2002) 等、項目反応間の順序性を仮定する既存のネットワークモデルを参考にしながらも、一般的な局所独立性を仮定するIRTモデルと変数間に順序性を仮定しないネットワークモデル(無向ネットワークモデル)との関係を検討したMarsman et al. (2018) に基づき、局所依存性を無向ネットワークで表現する方法(数学的なモデル)を検討する予定としていた。この実施予定と2020年度の研究実績を照らし合わせた場合に、概ね予定通りに研究が進んでいるため、記載の自己点検評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の申請時には、2021年度に、無向ネットワークの推定法として提案されている正則化を利用する方法(e.g., Friedman et al., 2008; Kramer et al., 2009)やベイズ推定法(e.g., Mohamadi & Wit, 2015)を用いて2020年度に得られたモデルの母数(e.g., 受験者の特性値や項目の難しさを表す統計量)を推定する際の手続き(計算方法)を確立し、各推定法を利用した場合の推定精度に関する比較を行うこととなっていた。また、得られた解析結果からテストの作成・評価・運用に資する情報(IRTに基づく解析で得られるテスト情報量等に相当するもの)を抽出する手続きを確立するために、2020年度に提案されたモデルの母数からこれらを計算する方法(計算式)を各指標の定義に基づいて確立することともなっていた。先に述べたように、2020年度の研究に関しては、おおよそ、申請時に予定していた通りに進んでいたため、2021年度に関しても、申請書に記載した通りに進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
本研究課題の申請時点では想定し得なかった新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な流行により、情報収集等のために参加予定だった関連する国際・国内学会への出張が全てキャンセルになり、また開催自体が見送られた学会などもあったため、旅費等としての使用を予定していた金額が全て未使用となった。そのため、2020年度に関しては、研究(シミュレーション実験等の実施)に必要なPCの購入に対する支出のみとなった。 未使用額は、研究成果の発表をするための学会参加に関連して助成金を使用する予定であり、特に、2021年度の後半には、COVID-19の感染が終息していた場合、国内学会や国際学会への出張を行う予定で、そのための支出を予定している。また、2020年度と2021年度に得られた研究成果を論文化するにあたり、英文校閲費やオープンアクセスジャーナルへの掲載料としてもまとまった額の助成金の支出を予定している。
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