2020 Fiscal Year Research-status Report
アダプティブ試験システムにおける動的なテスト理論とその推定方法の構築
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20K14172
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
作村 建紀 法政大学, 理工学部, 講師 (50735389)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 最適性 / ベイズ推定量 / ジェフリース事前分布 / 指数型分布族 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は小標本での能力評価の精度向上を目的として,そのための有力な推定方法として,自然母数の事後平均による推定量の可能性について検討した.この推定量は,カルバックライブラー損失についてのリスクを最小化する予測子と一致し,最適性を有する.予測子の考え方は,まだ未知の標本をターゲットとしている.アダプティブ試験におけるコンセプトは,解かれた履歴に合わせて次の問題項目を選定するというものであるから,予測子の考えを導入することは自然である.項目選定では,受験者能力を最も高精度で評価できるように,しばしば情報量を最大にする項目を受験者能力に合わせて選択するが,真の能力が不明であるため,推定された能力から項目選定を行う.IRTでの能力推定の推定量には,最尤推定量とベイズ推定などが提案されている.ベイズ推定における自然母数の事後平均による推定量は,予測分布のカルバックライブラ損失についてのリスクを最小にするという最適性を有することが,情報幾何学の観点から明らかになっている.これは,指数型分布族に属す分布のもとでの結論であり,2値IRTモデルも本来はベルヌーイ分布を仮定したものであるため,この性質を活かすことができる.そこで,2020年度は,ベルヌーイ分布のもとで自然母数の事後平均による推定量を提案し,その性能を評価した.事前分布としては無情報事前分布としてジェフリース事前分布を仮定した.その結果,従来の最尤推定量やモデルパラメータそのものの事後平均などよりも,提案推定量のほうが,リスクの観点から優れた性能を持つことが分かった.また,従来の有用な推定量である重み付き最尤推定量(WML)は,ジェフリース事前分布と関連が深いことも明らかになった.本研究成果については,研究集会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,予測分布のもとでIRTモデルの理論的枠組みを再構築し,予測子の考え方を導入した場合のIRTモデルの統計的推測理論の構築を行うことを計画していた.本年度の成果として,カルバックライブラ損失のもとで最適性を有する最適な予測子を項目反応理論のモデルに適用することを試みた.項目反応理論の二値のモデルはベルヌーイ分布に従うため,この最適予測子は自然母数の事後平均に一致する.この事実から,実際に推定量を導出し,シミュレーション研究を行ったところ,従来法に比べて優良な性質を持つ推定量であることが確認された.よって,計画していた予測子の考えに基づくIRTモデルの推論についてはおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の結果をもとに,2021年度は計画通りに,項目選定法について検討する.従来の情報量基準による項目選定では,過去の履歴に基づいた回答パタンのみを扱い,その時点で推定された能力に合わせて選定される.アダプティブ試験は受験者の能力に合わせて出題することが最も情報量が大きいのであるが,従来の方法では未来の可能性を考慮しておらず,その分の情報を落としている.一方,ベイズ予測子の考え方は未来の可能性に基づいて最適性を議論しているため,よりアダプティブ試験に相応しいものと考えられる.このとき,予測子に合わせた最適な項目を選定する方法について検討する.
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Causes of Carryover |
2019年12月から始まった Covid 19 による新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,参加を予定していた国際会議が中止となり,合わせてそのために計画していた旅費の使用計画を変更することとなった.コロナ禍の影響は2021年度,2022年度も継続することが想定されるが,少なくとも国際会議の開催方法については工夫されることが考えられるため,国際会議への参加やそこでの成果発表などは2021年度以降に行うとして変更した.
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Research Products
(2 results)