2020 Fiscal Year Research-status Report
曖昧な発話を解釈する能力の認知的基盤:ズレの「検出」と「反応」に着目して
Project/Area Number |
20K14176
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
村上 太郎 九州女子大学, 人間科学部, 講師 (20762074)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児 / 語用論 / 指示対象付与 / コミュニケーション / 選択的信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、指示意図を解釈する語用論的処理「指示対象付与」に着目し、社会的場面(他者のやりとり場面)における幼児の指示対象付与方略の発達過程を、行動実験によって解明することを目的とした。本年度の研究の観点として特徴的な点は、他者が行う発話解釈の適切性を幼児が第三者的視点からどのように判断(評価)しているのかを検討している点であり、この検討を行うために選択的信頼というキーワードを取り入れることとした。 具体的には、①幼児は、文脈をふまえて曖昧な発話を適切に解釈する他者を選好(信頼)するか、②関連性がない発話であっても抑揚などの要因(ユーモラスな発話)によって他者の選好の程度が変化するかを検討した。 その結果、発話解釈の適切性を第三者的な視点から評価する能力は3-4歳児でもある程度みられ、明示的に評価できるようになるのは5-6歳児であることが示された。また、3-4歳児でも、文脈に応じた適切な解釈を行わない他者より適切な解釈を行う他者から選択的に学習をすることが示された。さらに、適切でない解釈を行う2名の他者(真面目に答える/おどけた口調で答える)を情報提供者として比較した場合、答える際の抑揚などの影響は選択的信頼には影響しないことが示唆された。 本年度の結果は、本研究の問いの1つである「幼児は、他者間コミュニケーションにおける「曖昧さ」や「ズレ」を第三者的視点から「検出」することは可能か」に答えうる知見であり、本研究の実施計画が順調に遂行されていることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に、当初の予定を充足するものではないが、数件の保育園の協力の下、調査を進めることができた。今後もより詳細な検討を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
曖昧な発話を解釈する場面は日常生活の中で非常に多く存在する。そのため、発話解釈の適切性を、様々な関連性の観点から検討していく予定である。 また、他者との発話交換の中でのズレについて、子どもがどのように反応するのかを検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、予定していた出張(研究打合せ)や学会出張が軒並みキャンセルとなった。 また、調査に関しても多少は進めることができたが当初の予定と比べると進度は十分にできておらず、調査協力者や補助者への謝金としての支出も計上できていないことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Research Products
(2 results)