2021 Fiscal Year Research-status Report
友人関係の様態を考慮したうつ病大学生へのファーストエイド心理教育プログラムの開発
Project/Area Number |
20K14178
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
河合 輝久 山形大学, 地域教育文化学部, 講師 (60780509)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 傾聴 / 援助要請の勧め / うつ病 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,大学生におけるうつ病の症状を示す友人の話を聴くスキルを発揮する自信(以下,効力感)の程度を測る尺度を作成した。また,そのような友人に専門家の助けを求めるよう勧めるスキルを測定する尺度項目を収集・整理した。前者は,当初計画では,スキルを実行しようとする意図を測る予定であったが,行動の意図は,その行動ができるという効力感があって高まると考えられたため,効力感の程度を測定することに変更した。 前者の尺度については,話を聴く認知面と行動面のスキルを定義したうえで,各スキルの項目を作成した。その後,心理援助の専門家8名に各項目が定義に即した内容であるかを,一般大学生および大学院生10名に各項目のわかりやすさを評定してもらったうえで,大学生を対象に質問紙調査を実施した(研究1:500名,研究2:478名)。研究1にて,確認的因子分析を行った結果,想定通り,認知面の聴く効力感尺度は,「注意・集中」,「理解」,「記憶」,「解釈」,「評価の保留」の5因子が1次因子にまとまる2次因子モデルとしたところ,データとの当てはまりが概ねよかった。また,行動面の聴く効力感尺度は,「視線を合わせる」,「ペースを合わせる」,「話を遮らない」,「あいづちをうつ」,「質問・確認する」,「伝え返す」,「批判的に応答しない」,「表情を示す」,「適度な距離を保つ」,「開かれた姿勢を保つ」の10因子が1次因子にまとまる2次因子モデルとしたところ,データとの当てはまりが概ねよかった。研究2にて,作成尺度と,「共感的関心」,「視点取得」,「感情・欲求抑制」との関連を検討した結果,中程度以上の有意な正の相関を示した。一方,うつ病接触経験の高低によって作成尺度の下位尺度得点間の差を検討した結果,有意差はなかった。研究1,2を通して,各因子のω係数は.80以上であった。 後者の尺度は,項目収集および整理にとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた,専門家への援助要請勧奨スキル尺度の作成が完了していないため.「やや遅れている」と判断した。これは,次の二つの理由からである。第一に,研究初年度の計画が後ろ倒しになった影響のためである。第二に,援助を求める行動の理論に対応する形での項目内容の見直し・新たな項目の作成が必要となり,申請者が行った先行研究の知見を土台にする当初計画から変更を要したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
援助要請勧奨スキル尺度の質問項目プールは概ね収集できたため,学生相談の臨床経験を有する専門家にその内容的妥当性の評定を求め,援助要請勧奨スキル尺度を作成し,大学生を対象とした質問紙調査を通して,その妥当性と信頼性の検証を行う。 そのうえで,令和4年度に計画している,大学生の友人関係の様態によって,傾聴および援助要請勧奨の各スキルの効力感の程度が異なるかを検討する。その結果に基づき,わが国の大学生の友人関係の様態を考慮したうつ病大学生へのファーストエイドに関する心理教育プログラムを開発する。また,その効果について予備的検討も予定している。
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Causes of Carryover |
令和3年度実施予定であったインターネット調査が全て完了していないため,未実施分に加え,当初参加予定であった学会が新型コロナウィルスの影響によりオンライン実施になったことに伴い,旅費が発生しなかった分などが次年度使用額として計上されている。 これらは,基本的には当初予定通りに使用するが,旅費については,次年度参加予定の学会がオンライン開催の場合には,その費用をインターネット調査費用として活用する。
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