2022 Fiscal Year Research-status Report
友人関係の様態を考慮したうつ病大学生へのファーストエイド心理教育プログラムの開発
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20K14178
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
河合 輝久 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (60780509)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 援助要請の勧め / 学生相談機関 / 抑うつ症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,(1)昨年度の研究成果である「抑うつ症状を示す友人に対する傾聴効力尺度の作成」を学会にて公表,(2)「学生相談機関への援助要請を勧める効力感尺度」の作成,(3)(1)および(2)の得点は,大学生の友人関係の持ち方によって異なるかを検討する研究計画と所属機関での倫理審査の承認であった。 (2)の具体的な成果としては,うつ病発症期にある友人に対して,大学生が専門機関(学生相談機関)に援助を求めるよう勧める行動について,「気づき・状態評価の支え」,「意思決定の支え」,「意思に配慮した後押し」の3つの次元から捉える尺度を作成し,その信頼性と妥当性の一部を示した点である。これまで,「専門家に援助を求める(援助要請する)よう勧める」という行動は単一の評価項目で測定されてきた。しかし,援助要請に至るまでの過程に関する理論では,問題を認識・評価する段階,問題について援助を求めるか否かを意思決定する段階等が仮定されている。この点を踏まえると,「援助要請を勧める」という行動は,援助要請の各段階を支える行動を含むものと考えられる。実際,非専門家によるうつ病発症期にある者への初期支援のガイドラインでは,「専門家に援助要請を勧める」ことについて,その意思決定を支えるような行動(例,専門家に援助を求めることで利益を得られそうか尋ねる)が推奨されている。したがって,(2)の成果は,従来の測定項目の妥当性の限界を超え,大学生向けのうつ病の初期支援に関する啓発教育の効果指標の一つとなりうる点で意義があると考えられる。なお,本成果は令和5年度に学会にて公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに完遂予定であった,「援助を求めるよう勧める」という行動を測定する尺度の開発に際し,項目を推敲したうえで,実際の行動を測定するのか,その行動を実行する自信の程度を測定するのかを吟味したため,完遂までに時間を要した。その結果,当初の予定通りにいかず,全体的に計画が後倒しとなった。一方で,今後遂行する研究の一部はすでに所属機関での倫理審査を通過しており,実施の見通したが立っていることから,進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り,作成した尺度を用いた研究を遂行する。つまり,大学生が抑うつ症状を呈する友人の話を聴いたり,その友人に専門家に援助を求めるよう勧めたりするとき,それらを実行する自信の程度は大学生の友人関係の持ち方によって異なるのかを検討する。その結果を踏まえ,大学生の友人関係の特徴を踏まえたうつ病発症期にある者への初期支援に関する心理教育プログラムを開発し,その効果を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも進捗に遅れが生じており未実施の研究があること,参加予定の学会の一部がコロナ禍によりオンライン開催であったため旅費が発生しなかったこと等から,予定よりも支出額が少なく,次年度使用額が生じている。研究計画に沿って研究を遂行し,成果を学会等で発表することで当該助成金を使用する。なお,研究の進捗に応じ,「旅費」及び「人件費・旅費」として計上している一部は「その他」(調査費用)に変更して使用する。
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Research Products
(2 results)