2021 Fiscal Year Research-status Report
注意分割を伴う気晴らし技法が注意視野と反すう思考に及ぼす影響の検討
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20K14197
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 遥至 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (60822955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 気晴らし / 反すう / 注意制御 / 注意視野 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
ネガティブな事柄について繰り返し考え続ける「反すう」は、抑うつ気分の長期化・増幅をもたらし、うつ病をはじめとした気分障害の発症リスクともなることが知られている。近年、この反すう思考を、注意の視野が狭まることで特定のネガティブな情報のみが処理され続ける視野狭窄状態として説明するモデルが提唱されている。反すうに対する対処方略の一つに、ネガティブな事柄から他の対象へと注意をそらす「気晴らし」が挙げられる。先行研究では、気晴らしが反すう思考を中断させ、抑うつ気分の早期の改善に役立つことが示されてきた。しかし一方で、気晴らしの効果は一時的なものに過ぎないことも指摘され、長期的な反すうの改善には至らないという限界も示唆されている。 そこで本研究では、反すうの長期的な緩和をもたらしうる新たな気晴らし方略として、ネガティブな事柄を想起しながら同時に気晴らしに取り組む「注意分割気晴らし」の効果と作用機序を検討することを目的としている。既に実施した調査からは、個人の反すう傾向が高いほど3ヵ月後の抑うつが高くなるものの、注意を分割するスキルなどが高い場合には抑うつの高まりがみられないことが示された。この結果は、本研究が想定した注意分割気晴らしの作用機序を裏付けるものであったといえる。 そして当該年度は、注意分割気晴らしが複数の対象への注意の分割を促すことで注意視野を広げ、気分の改善・ネガティブな事柄に関する認知の変容、および問題解決方略の産出の向上をもたらすという仮説を検証する実験を行っており、目標の約半数の参加者からデータを得た段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響により、対面での実験実施に関する調整や参加者の募集に支障が出ている。また、2021年度より、申請者が研究活動に充てる時間を十分に確保することが難しい状況にあることも影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の6~7月頃までに、21年度より継続している実験(当初の計画における、実験1)を完了する。引き続き、気晴らしに関する新たな介入実験(実験2)を開始し、年度内に完了する。これらの実験の遂行にあたり、申請者の所属する大学の学生を研究補助者として雇用するため、研究期間内でのデータの取得は十分に可能であると考える。 また、これに並行して、社会人を対象としたオンライン調査を調査会社に委託し、データの取得および解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響などによる研究の遅れにより、現段階では予定していた2つの実験のうち1つめを実施している途中である。このため、この2つの実験の参加者謝金・実験補助者の人件費、社会人を対象とした調査の委託費、消耗品購入費として予定していた分の予算が次年度使用額となっている。 次年度には当初の計画に基づき、上記の使途で助成金を使用する計画である。内訳として、参加者謝金が約200,000円、実験補助者の人件費が約150,000円、調査委託費が約400,000円程度となる見込みであり、残額を消耗品購入費および学会参加費等に充てる予定である。
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Remarks |
本研究の結果の一部が、2022/2/9(水)放送のNHK「あさイチ」で紹介された。
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Research Products
(5 results)