2022 Fiscal Year Annual Research Report
注意分割を伴う気晴らし技法が注意視野と反すう思考に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
20K14197
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 遥至 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (60822955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 気晴らし / 反すう / 注意制御 / 気分 / 注意視野 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,意図的にネガティブな思考対象を想起しながら無関連の課題に取り組む注意分割気晴らしの効果および作用プロセスの検討を行った。 2020年度は大学生を対象とした調査を行い,注意を一点に集中するスキル,複数の対象に分割するスキルが高い場合にはネガティブな反復思考(反すう)によって生じる抑うつの悪化を予防できることを示した。しかし2022年度に社会人を対象として行った調査では,注意の分割スキルが高い場合には反すうと問題回避傾向の関連が強まることが示され,一概に特性的な注意分割スキルが反すうの悪影響を緩和するとは言えないことが示唆された。 2021-2022年度は,気晴らし時における注意状態がネガティブな気分,およびネガティブな対象について思考する際の認知的注意視野に及ぼす影響を検討する実験を行った。本実験では認知的注意視野の指標として,参加者が過去に体験した不快な出来事について挙げることのできる反応の総数のうち,状況の改善を目的とした行動(コーピング)が占める割合を用いた。また,気晴らし課題の性質による影響と気晴らしの方法による影響を弁別するため,切り絵作業を用いた実験1と塗り絵作業を用いた実験2を実施した。この結果,ネガティブな気分に及ぼす効果としては,気晴らし課題の種類を問わず,通常の気晴らしがその実施直後に高い改善効果を示すのに対し,注意分割気晴らしでは反すうを再喚起した際の気分の悪化が生じないことが明らかになった。認知的注意視野に関しては,塗り絵作業を用いた注意分割気晴らしにおいて特にコーピングの占める割合が高いことが示された。 本研究では,注意を逸らすことによる一時的な気分の改善を気晴らしの中核として捉える従来の理論に対し,不快な対象の捉え方(認知)を変化させ,より長期的な反すうの抑制効果をもたらすという気晴らしの新たな効果機序の一側面を提唱することができた。
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Research Products
(4 results)