2020 Fiscal Year Research-status Report
認知行動療法を実践するセラピストを対象とした訓練プログラムの開発
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20K14226
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
河村 麻果 北海道医療大学, 心理科学部, 助教 (60824175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 治療同盟 / アライアンス / 訓練プログラム / CBT / SV / 治療関係 / セラピストトレーニング / 同盟破綻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,アライアンスの質を測定する尺度であるWAI-SRの日本語版(J-WAI-SR)を作成すること,アライアンスの質を向上するための訓練プログラムを開発し,その効果検証を行うことであった。2020年度では,J-WAI-SRの日本語版を作成し,その信頼性と妥当性の検討をおこなった。その結果,J-WAI-SRは,再検査信頼性,内的整合性,収束的妥当性,因子的妥当性を有する尺度であることが明らかとなった。これにより,セラピストとクライエントの関係性の質であるアライアンスを測定することが可能となった。さらに,アライアンスはセラピーの効果を予測する重要な要素であることから,セラピストがクライエントに対してより効果的にセラピーを提供するための訓練の効果を測定することも可能となった。また,その研究成果については認知行動療法を行うセラピストの多くが所属する認知行動療法学会の学会誌に論文投稿を行い,公表した。さらに2020年度は,アライアンスの質の向上を目的とした訓練プログラムを作成するための予備的研究を実施した。具体的には,認知行動療法を実践する初任者セラピスト9名を対象に訓練プログラムを実施してその効果検証,プを行った。その結果,セラピストがクライエントをより良い関係を築くための振る舞いをセラピー中に行う,自己効力感を向上することはできたが,プログラム終了後に実践で用いられるほどのスキルを向上することはできなかった。しかし,よりよい,訓練プログラム作成のための有益な情報を得ることができた。具体的にはセッション数を増やしてロールプレイを増やすこと,困難なクライエントを対象に練習する前に基礎的な訓練の内容も含めることが重要であること等が明らかとなった。この研究成果についても,現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
科研費交付初年度のうちに,計画していた3つの研究(尺度作成,プログラムの作成,プログラムの効果検証)のうち,尺度作成が完了し,訓練プログラム作成のための予備的研究を行うことができ,有益な情報を得ることができたため,当初の計画以上に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,予備的研究で得た情報をもとに訓練プログラムの改定を行う。そして当初の計画通りに,改定した訓練プログラムをCBTを行う初任者セラピストを対象に実施し,その効果検証を行う。作成した,J-WAI-SRの反応性や解釈可能性についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,2020年度に開催された学会がオンライン開催となり,研究のための情報収集に必要と考え参加を予定していた学会への旅費がかからなかった。また,訓練プログラムの予備的研究もコロナの感染リスクを考えて,すべてオンラインで実施したため,プレ・ポストアセスメントを行う上で必要と考えていた録画機材やロールプレイを実施するための録音機材などを購入しなかった。また,プログラムを実施するための会議室等の施設使用料や研究参加者の交通費なども必要でなかったため,予定していた金額よりも大幅に少なくなった。 次年度は,可能であればオンラインではなく対面で訓練プログラムの実施を行いたいと考えているため,対面実施に必要となる録画機材や録音機材,参加者の交通費,施設使用料などに使用するため,使用額が2021年度に予定していたよりも増額する可能性が高い。そのため,2020年度に生じた次年度使用額から補填する必要がある。また,予備的研究の結果,プログラムの改定を行うことが必要であることが明らかとなったため,より幅広く学会に参加したり,書籍から情報収集を行い,専門家からの助言をもらうために助成金を使用する計画である。
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