2020 Fiscal Year Research-status Report
Complex PTSDにおける嗜癖問題の臨床心理学的理解と介入プログラムの作成
Project/Area Number |
20K14242
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 嗜癖 / 依存症 / Complex PTSD / トラウマ / 心理教育 / 短期精神療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき以下の研究を行った。 1) 嗜癖問題の現代的な臨床心理学的理解と,我々の研究グループで作成した嗜癖問題の心理教育テキストの概要について以下の研修会で講演を行った(石田哲也. 様々なアディクションに対応する臨床心理学的理解と心理教育.鹿児島県臨床心理士会・学校臨床心理士部会主催2020年度第1回研修.2020/08/23)。 2) Complex PTSDおよび嗜癖問題への臨床的介入に関して,これまでに行っている短期精神療法の転帰をまとめ,以下の学会で発表した(石田哲也ほか. 神経症圏患者への短期心理教育面接の効果検討.日本トラウマティック・ストレス学会.2020) 3) トラウマ体験後の精神症状を評価する尺度であるGlobal Psychotrauma Screen (GPS)の日本語版の妥当性を検討し以下の論文にまとめた(Oe, M., Kobayashi, Y., Ishida, T., Chiba, H., Matsuoka, M., Kakuma, T., Frewen, P., Olff, M. Screening for psychotrauma related symptoms: Japanese translation and pilot testing of the Global Psychotrauma Screen. European Journal of Psychotraumatology. 11(1) 1810893. 2020)。 4) 医療現場における職場暴力の影響を調査するため精神科看護師を対象とした質問し調査を行い,職場暴力とバーンアウトの関連を以下の論文にまとめた(Kobayashi, Y., Oe, M, Ishida, T., Matsuoka, M., Chiba, H., Uchimura, N. Workplace Violence and Its Effects on Burnout and Secondary Traumatic Stress among Mental Healthcare Nurses in Japan. International Journal of Environmental Research and Public Health. 17(8): 2747. 2020)。 5) トラウマ体験を持つ方への効果的な支援を検討するため,DV相談窓口の利用者への調査を行い,以下の学会で発表した(小林雄大ほか. DV相談窓口・DVシェルター利用者のPTSD重症度比較.日本トラウマティック・ストレス学会第19回大会. 2020)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はComplex PTSDにおける嗜癖問題に対する臨床心理学的理解を深め,効果的な臨床的介入を行うための準備を進めた。様々な生活習慣を包括的に取り扱い,併存する嗜癖問題に対応して利用できる心理教育テキストはすでに作成済みであり,本テキストについては著書にて公表予定である。また短期精神療法として心理教育に焦点を当てた介入実践を行っており,短期心理教育面接の効果や転帰について学会発表を行っている。トラウマ体験や嗜癖問題を取り扱うことは侵襲的になりやすく患者の防衛を強め治療中断を招きがちであるが,心理教育に焦点を当てた介入により中断率を低くできる可能性が示唆されている。これらの知見を踏まえ,次年度以降はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する調査研究を行い,併存例に適用可能な心理的介入プログラムを作成していく予定である。 Complex PTSDと嗜癖問題の併存例では問題が複雑化していることが予測される。Complex PTSD症状への自己治療として嗜癖問題が習慣化している可能性や,嗜癖問題によって症状悪化の悪循環が生じている可能性が推察されるため,治療的介入においてはまず問題の成り立ちに関する個別の理解を行うケースフォーミュレーションが重要である。そこで本年度は,問題に関する個別の理解を整理し効果的な介入を検討するためのケースフォーミュレーションシートを作成した。本シートを用いることで個別の問題への適切な理解が深まり,介入プログラムの効果を高めることが可能となると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Complex PTSDにおける嗜癖問題に関するアンケート調査を実施し,不快なPTSD症状に対するSelf-medicationとしての自己対処行動が習慣化し後の嗜癖問題に発展するという仮説を検証する。PTSDの主症状よりもComplex PTSDに見られる自己組織化の困難(DSO症状)の方が強く嗜癖問題と関係していると予測している。アンケート調査はオンラインで患者群に対して実施する予定である。Complex PTSDの各症状を尋ねる項目,習慣への没入度を測定する尺度に加えて,精神的健康度を測定するGHQ28,BASIS32等を用いる。調査は久留米大学医に関する倫理委員会の許可を得て実施する。 調査結果を踏まえ,Complex PTSDに併存する嗜癖問題に適用可能な心理的介入プログラムを作成する。プログラムには,PTSD症状や嗜癖問題に関する理解と対応をまとめた心理教育,セルフモニタリング,ストレスマネジメント,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,精神力動的理解に基づく支持・表出スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い効果を検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度は参加予定であった学会がCOVID-19の影響で中止またはweb開催に変更となり,旅費を次年度以降に繰り越したことで次年度使用額が生じた。次年度はアンケート調査の準備を進め,オンライン調査実施のための費用,物品費,人件費等の経費の執行が行われる予定である。また学会が現地開催されれば旅費の執行が行われる予定である。
|
Research Products
(5 results)