2021 Fiscal Year Research-status Report
Complex PTSDにおける嗜癖問題の臨床心理学的理解と介入プログラムの作成
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20K14242
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嗜癖 / 依存症 / Complex PTSD / トラウマ / 心理教育 / 短期精神商法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき以下の研究を行った。 1) Complex PTSDに併存する嗜癖問題の臨床心理学的理解と対応について以下の書籍を出版した (大江美佐里 (編) (2021). トラウマの伝え方-事例でみる心理教育実践. 誠信書房. (石田哲也 (2021). 第9章:合併する嗜癖問題に対する心理教育. pp101-115.)) 2) Complex PTSDと嗜癖問題が関連するメカニズムに関する臨床心理学的理解と介入について以下のシンポジウムで講演を行った(石田哲也 (2021/08/22). アディクションと複雑性PTSD.JSPN科研費19K17121助成webシンポジウム「複雑性PTSDが示す地平」.久留米大学医学部神経精神医学講座・久留米大学病院カウンセリングセンター主催) 3) 嗜癖問題の現代的な臨床心理学的理解と,我々の研究グループで作成した嗜癖問題の心理教育テキストの概要について以下の研修会で発表を行った(石田哲也ほか (2021/05/28). 併存する嗜癖問題に対応する認知行動療法的アプローチ.第481回福岡精神科集談会) 4) COVID-19の影響による嗜癖問題に関するオンライン調査と臨床的介入に関してまとめ,以下の学会で発表した(石田哲也ほか(2021). COVID-19の生活への影響に関する調査研究とゲームの増加が問題となった一症例.日本トラウマティック・ストレス学会第20回大会) 5) 医療現場における二次性外傷性ストレスの影響を調査するため看護師を対象とした質問紙調査を行い,バーンアウトの関連を以下の論文にまとめた(松岡美智子ほか (2021). 看護師のバーンアウトと二次的外傷性ストレス-救命センターと精神科病棟の比較.産業精神保健.29(2), 147-154.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する臨床心理学的理解を深め,効果的な臨床的介入を行うための準備を進めた。様々な生活習慣を包括的に取り扱い,併存する嗜癖問題に対応して利用できる心理教育テキストはすでに作成済みであり,本テキストについては著書にて公表した。また治療的介入においてはまず問題の成り立ちに関する個別の理解を行うケースフォーミュレーションが重要であることから,個別の理解を整理するためのケースフォーミュレーションシートを作成した。これらの成果を研修会・講演会にて発表し効果的な介入についてディスカッションを行った。トラウマ体験や嗜癖問題を取り扱うことは侵襲的になりやすく患者の防衛を強め治療中断を招きがちであるが,心理教育に焦点を当てた介入により中断率を低くできる可能性が示唆されている。また簡便な心理教育テキストを公開することで様々な臨床場面における初期対応として支援の裾野を広げることに貢献している。 これらの知見を踏まえ,次年度以降はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する調査研究を行い,併存例に適用可能な心理的介入プログラムを作成していく予定である。 Complex PTSDと嗜癖問題の併存例では問題が複雑化していることが予測される。Complex PTSD症状への自己治療として嗜癖問題が習慣化している可能性や,嗜癖問題によって症状悪化の悪循環が生じている可能性が推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
Complex PTSDにおける嗜癖問題に関するアンケート調査を実施し,不快なPTSD症状に対するSelf-medicationとしての自己対処行動が習慣化し後の嗜癖問題に 発展するという仮説を検証する。PTSDの主症状よりもComplex PTSDに見られる自己組織化の困難(DSO症状)の方が強く嗜癖問題と関係していると予測している。アンケート調査はオンラインで患者群に対して実施する予定である。Complex PTSDの各症状を尋ねる項目,習慣への没入度を測定する尺度に加えて,精神的健康度を測定するGHQ28,BASIS32等を用いる。調査は久留米大学医に関する倫理委員会の許可を得て実施する。 調査結果を踏まえ,Complex PTSDに併存する嗜癖問題に適用可能な心理的介入プログラムを作成する。プログラムには,PTSD症状や嗜癖問題に関する理解と対応をまとめた心理教育,セルフモニタリング,ストレスマネジメント,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,精神力動的理解に基づく支持・表出スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い効果を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度は参加予定であった学会がCOVID-19の影響で中止またはweb開催に変更となり,旅費を次年度以降に繰り越したことで次年度使用額が生じた。次年度はアンケート調査の準備を進め,オンライン調査実施のための費用,物品費,人件費等の経費の執行が行われる予定である。また学会が現地開催されれば旅費の執行が行われる予定である。
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