2023 Fiscal Year Research-status Report
Complex PTSDにおける嗜癖問題の臨床心理学的理解と介入プログラムの作成
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20K14242
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 嗜癖 / 依存症 / Complex PTSD / トラウマ / 心理教育 / 短期精神療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき以下の研究を行った。 1) ICD-11におけるComplex PTSD概念の正確な理解と様々な併存症状への対応について理解を広めるため、架空症例を用いた総説を作成し以下の論文で発表した。石田哲也・大江美佐里 (2023). ICD-11におけるComplex PTSD診断と対応.精神科.43(2), 170-175. 2) 看護師における職場暴力というトラウマティック・ストレスに関して、精神科看護師を対象としたデータを心的外傷後の怒りに注目して解析し以下の国際学会で発表した。Ishida T, Oe M, Kobayashi Y, Chiba H, Matsuoka M, Ozone M. (2023). Posttraumatic Anger in Workplace Violence: A Study of Mental Healthcare Nurses in Japan. International Society for Traumatic Stress Studies 39th Annual Meeting, poster presentation. Los Angeles, California, USA. 3) スタンフォード大学における性被害などのトラウマティック・ストレスに対応する学生支援チームを見学し情報交換を行った。研究者は以下の発表を行った。Ishida T. (2023/10/31). Posttraumatic Anger in Workplace Violence: A Study of Mental Healthcare Nurses in Japan. Cross cultural Trauma Informed Care Symposium. Stanford University, California, USA.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨今注目を集めているICD-11におけるComplex PTSD診断に関して正確な理解を広めるため、架空症例を用いた総説を作成し論文としてまとめた。またスタンフォード大学学生支援チームとの共同カンファランスや国際学会での発表を行い、トラウマティック・ストレスと嗜癖問題の併存ケースに対する支援のあり方について検討した。 これらの知見を踏まえ,次年度はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する調査研究を行い,併存例に適用可能な心理的介入プログラムを作成していく予定である。様々な生活習慣を包括的に取り扱い併存する嗜癖問題に対応して利用できる心理教育テキスト、個別の理解を整理するためのケースフォーミュレーションシートはすでに作成済みである。本年度はさらに、ASD等の神経発達症を有する場合にトラウマ症状の現れ方や支援方法に工夫が必要であることから、発達特性に応じた社会適応上の工夫をまとめた心理教育テキストを作成した。Complex PTSDと嗜癖問題の併存例では問題が複雑化していることが予測される。Complex PTSD症状への自己治療として嗜癖問題が習慣化している可能性や, 嗜癖問題によって症状悪化の悪循環が生じている可能性が推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
Complex PTSDにおける嗜癖問題に関するオンラインアンケート調査を実施し,不快なPTSD症状に対するSelf-medicationとしての自己対処行動が習慣化し後の嗜 癖問題に発展するという仮説を検証する。PTSDの主症状よりもComplex PTSDに見られる自己組織化の困難(DSO症状)の方が強く嗜癖問題と関係していると予測している。アンケート調査はオンラインで患者群に対して実施する予定である。Complex PTSDの各症状を尋ねる項目,習慣への没入度を測定する尺度に加えて,精神的健康度を測定するGHQ28,BASIS32等を用いる。調査は久留米大学医に関する倫理委員会の許可を得て実施する。 調査結果を踏まえ,Complex PTSDに併存する嗜癖問題に適用可能な心理的介入プログラムを作成する。プログラムには,PTSD症状や嗜癖問題に関する理解と対応をまとめた心理教育,セルフモニタリング,ストレスマネジメント,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,精神力動的理解に基づく支持・表出スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い効果を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度は実施予定であった調査がCOVID-19の影響で計画を次年度以降に繰り越したことで次年度使用額が生じた。次年度は オンラインアンケート調査実施のための費用,物品費,旅費等の経費の執行が行われる予定である。
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