2021 Fiscal Year Research-status Report
新規な道具使用学習における他者の行動観察の効果とその神経基盤の検討
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20K14248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石橋 遼 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90750266)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 1111 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては他の研究プロジェクトの実験実施に重点的に時間を割いたため、進展は大きくない。しかしながら2021年度の終盤に取得した道具画像認識時の脳活動データについて解析を進め、成果を得た。こちらのデータは観察学習の操作を加えてはいない一度きりの計測であるものの、熟知度(familiarity)の高い道具や低い道具の観察時の脳活動計測が含まれている。少なくともfamiliarな道具刺激について、想定している脳活動分析法(表象類似度解析)がどの程度想定された意味モデルの類似度と合致したパタンを示しうるか検討した。 まず道具の意味モデルとして、過去の実験で使用した90種の道具の使用状況(Context)をコーディングしたモデルを作成し、表象類似度解析に使用できるようにした。また、同じ90個の道具画像について、2021年度中に取得していた18名の被験者のデータについて解析を試みた。従来使用していた道具の機能(function)、操作(manipulation)の複数のモデルを加え、各モデルについて18名の脳画像データで表象類似度解析を行った。この際、familiarity評定が平均して5段階中4以上である59の道具についてのみ活動パタンデータを抽出して分析を試みた。結果として残念ながら全脳解析においては有意に道具の意味モデルとの類似度を示した領域は存在しなかった。しかし本実験の脳活動データ取得については40名を目標としており、現段階(18名)では統計的検定力が不足している恐れが大きい。本年度はその他のプロジェクトの実験実施を優先したためこれ以上のデータ数の追加はかなわなかったが今年度さらに実験を実施したのちに解析を進め、2016-17年に同じ道具画像を用いて取得した別の実験データの解析結果との整合性や、統合しての分析結果の検討を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
一昨年度に新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、新規実験の実施が全面的に停止となる期間が生じて本プロジェクトを含め、所属研究組織内での複数のプロジェクトの進行に遅れを生じた。本年度は年間を通じて実験が可能となったが、他のプロジェクトの実験実施を優先して行ったため、新規のデータ取得は達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
道具刺激の90種類のセットを引き続き用い、本年度は道具刺激観察時の脳活動データをさらに取得する。また、観察学習用の動画について検討し、familiarityの低い道具の使用方法の学習が動画視聴によって大きく促進されるか否かを行動実験によって確かめる。学習前後の道具の意味特徴モデルについては全被験者で同一のものを用いることをこれまで想定していた(意味情報は多くの人に共有されていることを踏まえて)が、これが妥当かどうかは再検討の余地がある。各被験者に道具の意味特徴の評定を求め、それぞれの個別の特徴モデルを作成して表象類似度解析に求める方向性も考えられる。この方向の有効性を確認するため、まず現状の18人の評定データで特徴ベクトルの方向の収束の度合いを確かめ、特にfamiliarityの高い道具で十分に収束度が高い(多くの人で共通の使用状況がイメージされている)かどうか、familiarityが低いでは評定の収束度も低いか(人によってイメージされる使用状況がバラバラかどうか)を確認する。この分析方法が妥当であればより大規模に特徴評定の調査を実施して、familiarityが低くかつ収束度も低い道具を、観察学習の対象として抽出する。
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Causes of Carryover |
本年度の実験実施に後れを生じ、来年度へ予定を延長したため。
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