2020 Fiscal Year Research-status Report
トップダウン処理の感情生成とその制御に関する神経生理学的検討-基礎から応用へ―
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20K14251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 幸世 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90767716)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トップダウン処理の感情 / 自伝的想起 / エピソード記憶 / 感情誘導 / 生理変化 / 瞳孔 / 社会的感情 / 対人関係ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、 トップダウン処理の感情誘導(日常生活における対人関係ストレスの想起による感情誘導)における生理的変化(瞳孔径と体表温度)と心理的変化(主観的感情変化)に関して中心に研究した。瞳孔径についての見解と感情変化に関する見解は、論文として発表した。今年度の助成金は、 主に上記の研究を遂行するための英文校閲の費用や、解析ソフトウェアの購入などに当てられた。
1. 瞳孔径変化に関する論文は、Journal of Psychophysiologyに掲載された。この論文では、これまでにあまり注目されてこなかったトップダウン処理の感情(日常生活における対人関係ストレスに関する複雑な感情)を自伝的記憶の想起によって実験的に誘導し、その際の瞳孔径変化についてまとめた。感情と瞳孔径変化の関連に関する先行研究では、感情変化と瞳孔径の拡大(高覚醒)に関するものがほとんどであるが、本研究では、想起によって瞳孔径が縮小すること、また瞳孔の縮小(低覚醒)が不快感情の増加と関連することを示した。瞳孔縮小と感情変化との関連は、これまでに理論上仮定されているものであったが、本研究では比較的長時間の想起を用いることによって、その関連を実証的に示した点で評価された。
2. 主観的感情変化に関する論文は、Frontiers in Psychologyに掲載された。この論文では、日常生活における対人関係ストレスに関する複雑な感情を自伝的記憶の想起によって実験的に誘導し、その際の主観的感情変化について詳細にまとめた。自伝的想起を用いた感情誘導では、特定の感情(悲しみ、怒りなど)感情を指定するのが通常であるが、本研究では特定の感情を指定せずテーマを設定することによって、日常体験に近いと思われる複雑な社会的感情を実験的に誘導し、詳細に検討した。日常での体験に近い感情を実験的にありのまま検証する意義について評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により当初予定していた実験は実施できなかったが、現状あるデータをまとめることによって関連論文を2本発表することができた。発表済みの論文以外にも、予定していた感情誘導実験における体表温度変化に関する見解や、感情制御実験の瞳孔径変化(ディストラクション効果の検証)に関する見解も論文にまとめており、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、現在投稿中の感情誘導実験における体表温度変化に関する論文や、感情制御実験の瞳孔径変化(ディストラクション効果の検証)に関する論文の出版を目指し、査読修正を行っていく予定である。対外的な発表については、感情誘導および制御に関する瞳孔径変化の見解を日本心理学会で小講演する予定である。また予定しているMRIの研究についても進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、予定していた研究成果発表の旅費と実験実施のための諸経費が不要になった。来年度は、引き続き英文校閲費が必要であることに加え、実験環境の構築や実施のための諸経費が必要になる。
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Research Products
(4 results)