2021 Fiscal Year Research-status Report
「体験の伴う」表情表出の時系列パターンに関する日英共同研究
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20K14256
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
難波 修史 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 研究員 (20845961)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 表情 / 感情 / 驚き |
Outline of Annual Research Achievements |
情動体験に伴う驚き表情と意図的に作成された表情の時空間的特徴に関する違いをこれまで明らかにしてきた。具体的には、体験の伴う驚き表情に関して は、表情反応に非対称性があり、相互相関が驚いたふりをする表情よりも小さくなることが明らかとなった。今年度はそうした形態の異なる表情をふまえたうえで、それらに対して観察者がどのように反応するのか、その体験共有プロセスに着目し検討を行った。より具体的には、表情を観察者に提示し、それに対して「体験が伴うかどうか」という判断と「同様の体験が生起したか」を測定した。測定データに対して、多項過程ツリーモデルと呼ばれる反応に至るまでのプロセスを数理的に記述した統計モデルを適用しその潜在変数を抽出した。その結果、体験共有のプロセスにおいて「体験がある」と判断されることが体験の共有を判断するうえで重要な指標であること、そしてそのプロセスには個人差が存在することが明らかとなった。さらに別の文脈で観察者がどのようにふるまうのかを検討するために、表情を学習のFeedbackとして適用した際の観察者による学習行動を検討した。その結果、より自然な感情表情がFeedbackされる場合のほうがより観察者の学習率が低下することが明らかとなった。この研究成果は、Frontiers in Psychology誌に採択され出版された。これらの結果から、多様な文脈における日本人の感情表情に対する心理反応の詳細が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、日本人と英国人の情動体験の伴う驚き表情に関しては、共通の時空間的特徴を有していることが期待されていた。しかし、研究1の結果は日本人に関しては眉と瞼の順序関係に違いがみられたものの、英国人に関しては眉と瞼の順序関係に十分な違いは見られずその代わりに運動の非対称性および相互相関の希薄さが情動体験を伴う表情でより強くなることが明らかとなった。この結果は、研究2で行う実験の前提に大きく影響するものであり、方向の転換として「体験の共有」および「観察者の判断に基づいた形態情報の記述」に焦点をあてることでより大きな進捗を生み出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに明らかにしてきた知見を"Plos One誌"などの査読付き国際雑誌に掲載させることを目指す。さらに当初予定していた感情表情に対する注意の側面に着目した実験検討を通して進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
注意を測定する実験に活用する人件費の使用が不十分であった。翌年度では、十分な実験を実施することで当該助成金を使用する予定である。
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