2020 Fiscal Year Research-status Report
予測的視線を指標とした認知症におけるエピソード記憶の解明
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20K14264
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
花塚 優貴 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (90867657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症 / 出来事の記憶 / 予測的視線 / アイトラッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は問診およびアイトラッカーを用いた注視時間の分析により、「認知症患者の出来事に関する記憶」について言語的・非言語的に評価することを目的とする。
2020年度は、認知症患者12名と健常者14名を対象とした検査を実施した。刺激は白いTシャツを着た人物と黒いTシャツを着た人物が箱に入ったくじ券を交互に引き、一定時間経過後に二人同時にくじを開け、一方が当たりくじを引いて喜び、もう一方がはずれくじを引いて落胆するという動画である。この刺激を15分の間隔を空けて呈示した。もし1回目に呈示されたビデオの内容を記憶していれば2回目の動画呈示時において、くじ券を開ける前の時点で当たりくじを引く人物に対する注視時間が増加するという「予測的視線」が得られると想定した。なお当たりくじを引く人物(白シャツor黒シャツ)は、参加者ごとにカウンターバランスを取った。
その結果、認知症群・健常群ともに2回目のビデオ呈示時では、くじを開ける直前の場面において当たりくじを引いた人物に対して予測的視線を示し、両群ともビデオの内容を記憶していることが明らかになった。しかし2回目のビデオ呈示後に行った問診において「ビデオではどちらの人物が当たりくじを引きましたか」と尋ね言語的な回答を求めたところ、健常群は正確に答えられたものの認知症群は答えることができなかった。以上のの結果から、認知症患者は自身が経験した内容を記憶してはいるものの、それを言語的に表現できていない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載していた通りの検査実施スケジュールをほぼすべて消化することができた。また2020年度に得られた研究成果については予定を前倒しして国際誌に投稿済であり、現在査読中という段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では認知症患者における出来事に関する記憶の正確性および保持期間について明らかにする。実験デザインは2020年度の実施したものをほぼ同様であるが、刺激とする動画および手続きを以下のようにアレンジする。まず動画は[1] くじ引き課題(A・Bのどちらが当たりくじを引くか?)、[2] ビーチフラッグ課題(A・B・Cのうち誰が競争に勝って旗を取るか?)、[3] ロシアンルーレット課題(A・B・C・Dのうち誰が辛い食べ物を選んで辛そうな表情をするか?)の3種類を用意し、記憶すべき対象の選択肢を増やすことで記憶に要する負荷を高めた条件で、記憶の正確性について検討する。また記銘段階から再認段階まで遅延期間を1日、1週間、1カ月の3段階を設定し、いつまで記憶の内容を保持できるかについても明らかにする。もし記銘段階で呈示されたビデオの内容を記憶していれば、登場人物の増加や遅延期間の延長があってもその出来事が生じる前に[1] 当たりを引いた人、[2] 競争に勝った人、[3] 辛い食べ物を選んだ人に対する注視時間が増加することが想定される。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行により、国際学会への参加・発表等を見送ったため。次年度に状況が改善された場合には、国内外での発表機会を増やす予定である。
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Research Products
(3 results)