2020 Fiscal Year Research-status Report
認知的要求の推移にともなう注意資源配分の調整メカニズム
Project/Area Number |
20K14273
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
杉本 史惠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (10738917)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 注意資源 / 事象関連脳電位 / プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、課題の認知的要求レベルの推移にともなう注意資源配分量の変動を検討することにより、注意資源配分量の調整メカニズムを解明することである。令和2年度は、事象関連脳電位(event-related brain potentials: ERP)を注意資源配分量の指標として用いて、注意資源配分量調整の基礎的特性(時間特性など)を明らかにする計画であった。しかし新型コロナウイルス感染拡大にともない、所属部署で人を対象とする実験が中止されたため、計画していた実験は実施できなかった。そのため、注意資源配分量の評価に最適な実験手続きを明らかにすることを目的として、過去の実験データの再解析を行った。 課題への注意資源配分量はERPを指標として評価することができる。その評価手続きでは、課題中に課題とは無関連な音刺激(プローブ)を呈示する。プローブに対するERPの振幅は、課題への注意資源配分量が少ない時に比べ多い時に減衰する。本研究はプローブの呈示時間間隔が、注意資源配分量に対するERPの感度に影響するかどうかを検討した。時間間隔の平均の長短とばらつきの有無の組み合わせによる4種類の呈示時間間隔でプローブを呈示した実験データを解析した。各呈示時間間隔タイプについて、注意資源配分量の評価に必要な最短の脳波データ長(脳波計測時間)を推定した。その結果、評価に必要な最短脳波データ長については呈示時間間隔タイプ間で顕著な違いはみられなかった。しかし評価の指標となるERP成分については、長時間・ばらつき有りの呈示時間間隔タイプを用いた場合のみ、N1だけでなくP2も信頼性の高い指標として利用できることが示された。本研究は、信頼性の高い注意資源配分量評価を可能にするプローブ呈示手続きを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は、事象関連脳電位(event-related brain potentials: ERP)を注意資源配分量の指標として用いて、注意資源配分量調整の基礎的特性(時間特性など)を明らかにする計画であった。しかし新型コロナウイルス感染拡大にともない、所属部署で人を対象とする実験が中止されたため、計画していた実験は実施できなかった。そのため、本研究課題の進捗は計画よりも遅れている。 令和2年度中に行った実験データ解析により、信頼性の高い注意資源配分量評価を可能にする手続きが明らかになった。令和3年度はこの手続きを利用して実験を進める計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、(1) 注意資源配分量の調整の時間特性と、(2) 課題の認知的要求レベルについての予測が注意資源配分量の調整に及ぼす影響を検討する。(1)は注意資源配分調整のボトムアップ制御の解明を目的とする。脳波計測実験を行い、課題の認知的要求レベルが予期せぬタイミングで変化した時に、その変化自転から注意資源配分量の変化が始まるまでの時間と、配分量が安定するまでの時間を明らかにする。課題難度(変化前および変化後)を系統的に操作し、調整メカニズムの時間特性を体系的に明らかにする。(2)は注意資源配分調整のトップダウン制御の解明を目的とする。脳波計測実験を行い、認知的要求レベルが変化するタイミングを予測できる場合に、その予測に基づいて効率的に注意資源配分量が調整される可能性を検討する。また、予測が誤っていた場合に、予測の修正のコストが発生する可能性を検討する。以上の研究を通して、注意資源配分の調整メカニズムの特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和2年度に計画していた実験が実施できなかったため、実験参加者への謝金や物品費(脳波計測用品の購入費)は使用せず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、令和3年に実施する実験への参加者の謝金支払いと、脳波計測用品の購入に使用する。
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