2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K14280
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
社本 陽太 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (50823647)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / 微分方程式の不確定特異点 / 共形場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
微分方程式の特異点の周りで, 方程式の解を与える関数が, 指数的な振る舞いをするとき, その特異点を不確定(irregular)特異点と呼ぶことがあります. この不確定特異点と呼ばれる特異点において, ストークス現象と呼ばれる, 方程式の解が不連続的に変化する現象があります. 本年度は, このStokes現象について, 差分方程式と層の理論の観点からプレプリントを執筆しました. そして, このプレプリントの内容について, いくつかのオンラインで開かれた研究集会において, 講演を行いました. このプレプリントで研究したストークス現象は, 直接的には, 同変ドゥブロヴィン予想と呼ばれるミラー対称性予想への応用が期待される構造ですが, それだけでなく, 共形場理論の数学的な研究に現れるR行列と呼ばれる行列やその一般化とも関連の深い構造ではないかと考えています. また, 2019年度に執筆した不確定特異型頂点作用素代数について, 頂点作用素代数の専門家を新たに一人, 共同研究者として迎え入れ, 再検討を始めました. その結果, これまでに得られた知見と合わせて, 当該研究における新たな方向性を見出すことができたのではないかと考えています. 新たな研究においては, 代数構造ではなく, 加群の構造について新しいクラスを導入し, それらから得られる不確定特異性を持つ共形ブロックを研究する方針です. 今後の研究においては, この新たな方向性について, より具体的な応用を視野に入れた研究を進めていきたいと考えています.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果として, プレプリントの執筆ができたこと, また, その内容について講演が行えたことなどは, 順調に進展した面として考えて良いと考えている. 新型コロナウイルスの影響で, 共同研究者との直接的な交流の機会が減ってしまったが, オンラインのツールを用いて, 議論が行えたこと, 新たに一人の共同研究者を迎えて, 議論が行えたこと, 新たな方向性を見出せたことなども順調に進んだ点ではなかったかと考えている. 一方で, 方針を新たにしたため, 新たな論文を執筆する等の目に見える成果にはまだつながっていない面もあるため.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の作成当初においては, 頂点作用素代数の「代数構造」を変形することで, 共形場理論に現れる不確定特異性を記述する数学的枠組みを導入することを計画していたが, 研究が進むにつれて, むしろ, 「加群の構造」を変形する方が, 応用その他を考えた場合に得策であるという認識に至った. そのため, 今後の研究においては, 不確定特異性が現れる, 加群の構造の研究と, その応用を目標に研究を進める.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により, 旅費等の使用が予定よりも大幅に少なくなったため, 361,403円を次年度に使用することとなりました. 本年度は, これと, 翌年度分として請求した助成金を用いて, テレワーク環境の整備や, 図書館に通いにくくなったことを補うための書籍, 電子書籍の購入等に当てたいと考えています. また, 新型コロナウイルスの影響が緩和された場合には, 海外出張などに利用したいと考えています.
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