2020 Fiscal Year Research-status Report
Weight modules and crystal bases for quantum symmetric pairs
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20K14286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 英也 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (10848782)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子対称対 / クリスタル / 組合せ論的表現論 / 表現論 / 量子群 / 標準基底 / 結晶基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、主にAI型の量子対称対の表現論に関する研究を行った。量子対称対は型が非常に多く、異なる型の量子対称対の表現を統一的に理解できる理論はまだない。そこで、AI型に限定して考察を行った。AI型というのは、特殊線形リー代数と特殊直交リー代数の組に対応するものであり、直交多項式論、調和解析、可積分系など幅広い分野に登場する、重要な考察対象である。 私のこれまでの研究において、AI型の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現というクラスの表現は全て分類されている。そこで、本研究では、各有限次元古典ウェイト表現の構造を詳しく調べた。特に、ベクトル表現(あるいは自然表現)と呼ばれる、構造が非常に簡単な表現に注目し、そのテンソル積表現の構造を解析した。その過程で、標準的Xウェイト表現という概念を発見し、その性質を調べることで、有限次元古典ウェイト表現の構造をわかりやすく記述することに成功した。結果として、有限次元古典ウェイト表現は「標準基底」と呼ぶべき顕著な性質を持つことがわかった。 さらに、標準基底の主要部を抽出することで、「結晶基底」と呼ぶべき組合せ論的構造を得た。これにより、AI型の量子対称対の言葉を使わずとも、その有限次元古典ウェイト表現の構造を記述することが可能となった。 以上の事実は、AI型の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現論と、量子群の有限次元表現論の類似性を示している。AI型以外の一般の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現論でも同様のことが成り立つと期待されているが、本研究はその予想を支持するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、量子対称対の表現の構造を詳しく調べて、組合せ論的構造を抽出することである。「研究実績の概要」で述べた通り、AI型という特別な量子対称対について、この目的を達成した。このことは、他の方でも組合せ論的構造が存在することを支持する結果である。一方で、AI型に特有の現象も発見されており、他の方へ拡張する際の障害になる。この障害は、AI型以外の型で同様の考察を行い、対応する現象を発見することで取り除くことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、AI型の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現の構造を詳細に理解することができた。その過程で、他の型の量子対称対の表現論にも応用できる一般的な事実と、AI型に特有の事実が見えてきた。 今後の研究では、AI型の量子対称対について得られた結果を他の型へ拡張することを目指す。まずは、先に述べた「一般的な事実」をAI型以外の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現論において証明する。これにより、一般の量子対称対の有限次元古典ウェイト表現の構造を統一的にある程度理解することができるようになる。 次に、標準基底と結晶基底について考える。AI型の場合は、ここで「特有の事実」を用いているため、他の型へ統一的に拡張することは難しいと思われる。そこで、量子対称対の理論や他分野へ応用する上で特に重要だと思われるAIII型の量子対称対に注目する。AI型とAIII型の量子対称対は、その構造が大きく異なっているため、両者が標準基底と結晶基底の理論を持つことが示せれば、他の型へ拡張する際の大きな足掛かりになる。
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