2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K14292
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松坂 俊輝 名古屋大学, 高等研究院(多元), 特任助教 (60868157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モックモジュラー形式 / サイクル積分 / 双曲型Eisenstein級数 / Rademacher記号 / モジュラー結び目 |
Outline of Annual Research Achievements |
整数係数二元二次形式から定まるEisenstein級数と呼ばれる対象がある.二次形式の判別式の符号に応じて放物型/楕円型/双曲型と分類され,自身の以前の研究において,重さ2の場合にそれぞれharmonic/polar harmonic/locally harmonic Maass形式が得られることを示していた.本年度はまず,重さ2の双曲型Eisenstein級数のFourier係数を明示的に計算し,重さ0の弱正則モジュラー形式のサイクル積分を用いて記述できることを明らかにした. 関連して,植木潤氏(東京電機大学)と共同で,三角群Γ(p,q,∞)に対する重さ2のモックモジュラー形式を考察し,古典的なRademacher記号の拡張を行なった.さらに空間Γ(p,q,∞)\SL2(R)(トーラス結び目の補空間)内にモジュラー結び目の三角群類似を定義し,「モジュラー結び目とトレフォイルの絡み数がRademacher記号に等しい」というGhysの結果を,一般のトーラス結び目に対して拡張することに成功した. また植木潤氏と共同でFriday Tea Time Zoom SeminarというZoomを用いたオンライン型の研究セミナーを立ち上げ,計30回の開催を行った.新たに始まった共同研究も多く,Beata Benyi氏(University of Public Service)と行なった対称化多重Bernoulli数の組合せ的解釈,齋藤耕太氏(名古屋大学)と行なったPiatetski-Shapiro列からなる長さ3の等差数列,に関する研究論文はそれぞれThe Electronic Journal of Combinatorics, Acta Arithmeticaに掲載が決まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,双曲型Eisenstein級数,双曲Rademacher記号に関する研究は順調に進んでいる.さらには予想していなかったこととして,Rademacher記号の三角群への一般化,モジュラー結び目に関するGhysの結果の拡張を行うことができた.加えて,オンライン型セミナーの開催によって様々な分野の研究者との活発な議論が可能となり,それによって新たな共同研究が複数開始した.以上を踏まえ,当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた双曲型Eisenstein級数やlocally harmonic Maass形式をヒントに,j関数のサイクル積分の代数的な性質を得られないか考察する.また今回新たに導入した三角群に対するRademacher記号は,重さ2のharmonic Maass形式のサイクル積分として記述することもできる.これをきっかけに結び目理論の研究も取り入れつつ,harmonic Maass形式の新たな側面を探ることも重要かつ面白いアプローチである.引き続きオンラインセミナー等で情報を収集すると共に,本年度行った多種多様な共同研究を互いに応用させることも視野に入れていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で対面での研究集会が行われず,旅費を使用することがなかったため,次年度使用額が生じた.次年度使用計画としては,本年度に引き続きオンラインセミナー等の開催費用,文献資料・計算機周辺機器の購入費用とし,情勢が許せば研究打ち合わせや研究集会参加のための旅費に用いる.
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Research Products
(18 results)