2021 Fiscal Year Research-status Report
「高次Fittingイデアルを用いた岩澤理論の精密化」の拡張と明示的計算
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20K14295
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大下 達也 群馬大学, 共同教育学部, 准教授 (70712420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 整数論 / 岩澤理論 / イデアル類群 / 楕円曲線 / Selmer群 / Galoisコホモロジー / Euler系 / 高次Fittingイデアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度から引き続いて実施している次の2件の共同研究を中心に据えて当課題の研究に従事した。 (1) イデアル類群の漸近挙動に関する平之内俊郎氏(九州工業大学)との共同研究 (2) 総実代数体に付随するトーラスのポリログ類と新谷生成類に関する坂内健一氏(慶應義塾大学)らとの共同研究 特に、本年度は(1)の研究のプレプリントを1本発表することが出来た。(1)の研究の目的は、素数pおよび有理数体上で定義された楕円曲線Eを固定して、Eのp^nねじれ点の座標を有理数体に添加して得られる代数体の拡大塔{K_n}のイデアル類群のp-Sylow部分群の漸近的挙動を楕円曲線の岩澤理論の観点から記述することである。本年度の研究では、前年度の研究成果を基に、楕円曲線Eと素数pの組が適切な条件を満たすとき、「楕円曲線Eの定める法p^n Galois表現の反傾表現」によって切り取られるK_nのイデアル類群のある剰余加群A_nが楕円曲線の精Selmer群から定まる円分岩澤加群Xを用いて記述できることを証明した。この記述を基に、A_nの位数の漸近的挙動をXの岩澤不変量を用いて記述する、「岩澤の類数公式型」の漸近公式を得た。尚、楕円曲線の岩澤主予想の下では、岩澤加群Xの岩澤不変量は、Beilinson-加藤元のEuler系を用いて記述されるため、本研究で得られた漸近公式をBeilinson-加藤元を用いて書き直すことも出来る。これらの成果を論文にまとめて、プレプリントを公開した。 本研究は、楕円曲線の岩澤加群を用いることで先行研究で得られた「{K_n}に沿ったイデアル類群の漸近的下界」の精密化を与えているという点だけでなく、「A_n」という形で「楕円曲線の精Selmer群の円分岩澤分加群と対応するイデアル類群の商」を明示的に取り出すという点にも大きな新規性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、新型コロナウイルスの流行により、対面での研究打ち合わせが困難な状況であったが、Zoomを用いたオンラインでの研究打ち合わせにより、研究を円滑に進行することが出来た。研究実績の概要の欄でも述べた通り、「岩澤加群Xに対応するイデアル類群の商をA_nという形で明示的に与える」という本年度の平之内氏との共同研究の成果は、これまでの研究になかった視点を提供するものであり、今後の研究の遂行に新たな知見をもたらしうると期待できる。従って、本年度の研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も平之内氏との共同研究および坂内氏らとの共同研究を継続して実施していくとともに、非可換岩澤理論の精密化および計算機を用いたEuler系のKolyvagin導分の計算に関する研究を順次遂行していく予定である。 特に、平之内氏との共同研究については、今後は、本年度に得られた結果の次の2方向への拡張することを試みる。 (1) アーベル多様体への高次元化、更には一般のGalois表現への拡張を試みる。 (2) 本年度の研究で得られた成果では、楕円曲線Eが乗法還元を持つような素数に対して、技術的な過程を課していた。この過程はこの条件の緩和を試みる。 (1)の困難さの中には悪い還元を持つ素数での局所体のGaloisコホモロジーに関するものもあり、(1)と(2)の方向性の拡張は無関係ではないと考えられる。(1)と(2)の拡張を同時に行うことで、ある種のシナジー効果が得られないかと期待している。また、これらの研究の手がかりとして、「計算機を用いてA_nおよび岩澤加群Xに関連する種々の量に関する具体例の計算も試みる予定である。岩澤主予想の下でXの構造はBeilinson-加藤元のEuler系を用いて記述されるので、この研究は前述のEuler系のKolyvagin導分の計算の研究とも関係していると期待できる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、出張の予定を全てキャンセルして、オンラインでの研究集会参加・研究打ち合わせに切り替えたため、当初の使用予定額との差額が生じた。繰り越した金額は、次年度の研究打ち合わせのための出張旅費および物品費(専門書およびPC附属品、計算ソフト等の購入)で使用する予定である。
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Research Products
(5 results)