2022 Fiscal Year Research-status Report
計算代数手法に基づく正標数の代数曲線に関する研究の深化と暗号応用への展望
Project/Area Number |
20K14301
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 桃成 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (10824708)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 超特異曲線 / 超特別曲線 / 計算代数幾何学 / 自己同型群 / アーベル多様体 / 同種写像 / 正則微分形式 / グレブナー基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
正標数の代数幾何学における主要な課題の一つである,与えられた不変量をもつ正標数の体上の曲線が存在するか否かの決定,および存在する場合は数え上げや各曲線の構造決定について,主に研究に取り組んだ.また,これらの課題の解決に必須となる,計算代数幾何学のアルゴリズム群を整備した.2022年度の主な結果は以下の四つである. [1] 原下秀士氏(横浜国立大学),大橋亮氏(横浜国立大学)との共同研究において,自己同型群がKlein四元群を含むような種数4超特別hyperelliptic曲線の高速生成アルゴリズムを開発し,計算機上の実行によって従来研究よりも非常に大きな標数(7,000程度)に対し数え上げの結果を得ることができた.この結果は査読付き国際会議WAIFI2022に発表が受理された. [2] 中川輔氏(東京大学),高木剛氏(東京大学)との共同研究で,自己同型群が位数6巡回群を含む種数4超特別hyperelliptic曲線の高速数え上げアルゴリズムを開発した.この結果は査読付き国際会議CASC2022に発表が受理された. [3] 守谷共起氏(東京大学)との共同研究で,アーベル多様体間の分解Richelot同種写像を計算するアルゴリズムを開発し,その応用として種数3の場合に超特別曲線を高速に列挙するアルゴリズムを構成した.この結果はプレプリントにまとめarXivに公開済みであり,現在雑誌投稿中である. [4] 原下氏と共同で,特異点を持つ平面曲線の特異点解消を求めるアルゴリズム,およびその得られた非特異曲線の正則微分形式のなす空間を計算するアルゴリズムを開発した.この結果はプレプリントにまとめarXivに公開済みである. これらの他にも,有限体上の連立代数方程式系の高速求解アルゴリズムや,外積代数におけるグレブナー基底の高速計算に関する結果が得られており,それぞれ論文にまとめ雑誌投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度当初の計画では主に種数4超楕円(hyperelliptic)の場合における超特別曲線および超特異曲線の存在と数え上げに取り組む予定であったが,これは上記研究実績の概要における[1],[2]において進展させることができた.また,副課題としてアーベル多様体の間の同種写像について計算方法の整備を行う予定であったが,これは[3]においてRichelot同種という条件付きであるが進展させることができた.上記に加え,2023年度以降での研究の推進を検討していた,[4]の一般の平面曲線に対する正則微分形式のなす空間を計算するアルゴリズムなどの,本研究課題解決のために必須となる計算代数幾何学のアルゴリズムを幾つか開発することができた.これらのアルゴリズムにより,超特別曲線および超特異曲線を含む正標数の代数曲線(やアーベル多様体)をより深く調べることができるようになったため,2023年度以降の研究がより効率的に遂行できる見通しが立ったと言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究成果を踏まえ,今後はより困難とされる種数5以上の超特別曲線および超特異曲線の(非)存在性の決定と数え上げに取り組む.種数4以下についても,自己同型群の形ごとの(非)存在性の決定と数え上げに関して未解決問題が残されているので,これについても問題の解決を目指す.また,計算機を用いてこれまでに得られた(あるいはこれから得られる)結果については,実験データをもとに理論的な証明も行う.加えて,同種写像や各種不変量の計算などの,計算代数幾何学のアルゴリズム群の整備についても引き続き推進し,開発したアルゴリズムを応用することで上記の超特別曲線および超特異曲線を含む正標数の代数曲線に関する課題の解決に貢献する.これらの課題解決に向けて,これまでに引き続き原下氏,大橋氏,守谷氏らとの共同研究を今後も実施する. また,新型コロナウイルス感染症の5類引き下げに伴い行動制限も緩和されてきたので,出張による打ち合わせや学会参加などを行い,共同研究を効率的に遂行するとともに本研究で得られた成果を積極的に発表する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響と研究計画の一部変更により,研究費の使用計画を年度内に複数回練り直す必要が生じたためである.具体的には,新型コロナウイルスの影響により,参加を予定していた国際会議がオンライン開催となり,海外渡航旅費分(約20~30万円)が未使用となった.また,本年度に購入を予定していた高い並列処理性能を持つPC(当初50万円程度を想定)についても,半導体の価格高騰により2022年度中に購入の目処が立たなかった. したがって2022年度未使用額は,上記PC(あるいは類似品)購入費用,あるいは旅費(共同研究者との打ち合わせ、国際会議を含む各種学術会合への参加および研究成果の発表)にあてる.
|
Research Products
(11 results)