2022 Fiscal Year Research-status Report
複素球多様体に対する可視的作用とその表現の分規則への応用
Project/Area Number |
20K14305
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雄一郎 東京大学, 大学院数理科学研究科, 助教 (70780063)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 実簡約リー群 / 等質空間 / 無重複表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
群からヒルベルト空間上のユニタリ作用素全体への準同型をユニタリ表現といいます。局所コンパクトな群の(連続な)ユニタリ表現は、群の共役作用の下で不変である作用素全体のなす環が可換であるとき、無重複といわれます。これは、表現の分解においてその既約成分に重複が起こらないことを表します。例として1次元トーラスによる線型作用を考えますと、無重複性はその固有値が全て異なることに相当します。特に、群の表現それ自身が既約であれば無重複となります。 さて、コンパクトリー群の既約表現に対しては、その(複素)幾何的な実現がBorel-Weilの定理によって与えられます。おおまかに、この定理は任意の既約ユニタリ表現が複素旗多様体という等質空間上の正則線束の切断の空間として実現できる、というものです。 より一般の設定として、(コンパクトとは限らない)リー群による複素多様体上のエルミート正則ベクトル束への正則な作用を考えるとき、底空間への作用が推移的(底空間が等質空間となる)でありかつ各点における固定化部分群によるファイバーへの作用が既約であれば、ベクトル束の正則切断の空間に実現されるユニタリ表現は既約である、ということが小林昭七先生によって証明されました。 今年度の研究によって、切断の空間だけでなくより高次のコホモロジーの空間に実現されるユニタリ表現に対しても、その既約性を得るのに本研究の手法が有効であるということが分かりました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画をたてた当初には想定していなかった成果が得られたとはいえ、参加を予定していた学会や研究会などの中止や延期などの影響もあり、予定通りの進捗とはいえませんため、やや遅れているとしました。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗にやや遅れが生じているものの、研究方策そのものに欠陥が見つかったというわけではありませんので、このまま研究を進めてまいります。
|
Causes of Carryover |
国際研究集会の参加者の旅費などの開催経費に使用させていただく予定でおりましたが、感染症の流行がなかった場合に想定される人数に比較して、海外からの参加者が少なかったことや、予定していた出張がなくなったことなどにより、次年度使用額が生じました。
|