2022 Fiscal Year Annual Research Report
反ド・ジッター空間における曲面論と普遍タイヒミュラー理論との相互的研究
Project/Area Number |
20K14306
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤野 弘基 名古屋大学, 高等研究院(多元), 特任助教 (90824037)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 極小曲面 / 極大曲面 / タイヒミュラー空間 / 調和写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
反ド・ジッター空間における曲面論と普遍タイヒミュラー空間論との相互的研究の一つとして、リーマン面がタイヒミュラー空間内でどのように退化するか、ボンサンテ・シュレンカー対応を用いた可視化を試みた。ボンサンテ・シュレンカー対応は「タイヒミュラー空間」と「三次元反ド・ジッター空間内のある種の極大曲面全体」との間の一対一対応である。これにより抽象的なリーマン面が、反ド・ジッター空間という三次元(すなわち可視化可能な)時空内の曲面に置き換わるため、退化の様子を可視化でき(収束したとすれば)退化極限を実際に目で見ることが可能となる。 本研究では上記研究の基礎研究として、平坦空間(時空)内の平均曲率零曲面について調べることに終始した。三次元ユークリッド空間内の極小曲面と三次元ミンコフスキー空間内の極大曲面との古典的な双対対応を出発点として、様々な空間(時空)を跨ぐ曲面の変形を定義し、その変形に対しクラスト型の定理を導いた。また変形によって保たれる(変化する)曲面の対称性や境界挙動についても詳しい結果が得られた。これらの結果は、反ド・ジッター空間の場合にも空間(時空)を跨いだ曲面の対応を観察することの有用性を示唆しており興味深い。また境界挙動の研究の応用として、幾つかの空間内の平均曲率零曲面に対し、ある種の特異性を持った境界に関する曲面の鏡像原理を証明した。これによって特異性を持った三重周期曲面を容易に構成できるようになった。 最終年度では空間(時空)を跨いだ変形に付随する対称性の対応について、より一般の変形(グルサ型変換)に議論を拡張できないか調べた。結果として幾何的な議論を用いて一般化できたが、これまでの研究を踏まえると(調和)関数論にはより本質的で深遠な結果が見つかると期待できる。従って(調和)関数論の発展及び非平坦空間(時空)研究の新たな足掛かりが得られたとも考えられる。
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