2021 Fiscal Year Research-status Report
新しい幾何学的フローを用いたK-安定でないFano多様体の研究
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20K14308
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 九州大学, 数理学研究院, 助教 (20854706)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | dHYM方程式 / J-方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の2つの研究を行った: (1) supercritical deformed Hermitian-Yang-Mills (dHYM)方程式に対するNakai-Moishezon型判定法の構成.この研究はJianchun Chu氏(Peking University)とMan-Chun Lee氏(Chinese University of Hong Kong)との共同研究である.通常のNakai-Moishezon判定法は正則直線束Lの豊富性を調べる方法であり,Lの1次Chern類とsubvarietyに関する正則自己交叉数によって記述される.今回,我々が求めた判定法も基本的には同じだが,Lの1次Chern類だけでなく,Kahler類の族を含んだ条件であり,より複雑な形をしている.特に射影多様体の場合には条件をさらに簡約化することができ,結論として,Lの1次Chern類とsubvarietyのみを含んだ正則自己交叉数だけを調べればよいことが分かった.これは,Collins-Jacob-Yauが2015年の論文で提唱した予想に対する肯定的な解決を与える.研究結果は既に論文としてまとめ,Journal of Differential Geometryからの出版が決定している. (2) J-方程式の高階正則ベクトル束への一般化.この研究では,J-方程式を正則ベクトル束へと一般化し,その基本的性質,具体例,代数的安定性との関係およびdHYM方程式との関係を調べた.具体的には,GIT描像の構成,Hermitian計量に対する適切な正値性概念の導入,漸近的J-安定なベクトル束上での具体例の構成,vortex束上での次元簡約による具体例の構成,small volume limitによるdHYM接続の構成への応用等である.研究結果は論文にまとめ,現在,arXivで公開中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であるFano多様体に対しては十分な研究成果が得られなかったが,その他のcomplex Hessian方程式(dHYM方程式,J-方程式)に対して大きな進展があった.これらの理論はFano多様体上のKahler-Einstein計量に対するYau-Donaldson-Tian予想がモデルとなっているため,研究を進めることである程度の相乗効果が期待できると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き,complex Hessian方程式という広い枠組みの中で研究に取り組みたいと考えている.特にdHYM方程式に関しては最適退化の構成と正則ベクトル束への一般化が最重要課題となる.最適退化の構成で鍵となるのはalmost calibratedなポテンシャル全体の成す空間の測地線論である.flag idealから標準的に測地線を構成する方法について理解を深める必要がある.ベクトル束に対しては,今のところ具体例はMumford semistable束上の複素構造の十分小さな変形によって得られるものしか構成できていない.この場合も,より大域的な結果を得るためには,測地線の存在とそのregularityの証明が課題となるので,重点的に取り組みたいと考えている.
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Causes of Carryover |
今年度も新型コロナウイルスの影響により多くの研究集会の対面での開催が中止となり,出張ができなかった.次年度以降の出張費,もしくは書籍の購入に充てたいと考えている.
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