2022 Fiscal Year Research-status Report
新しい幾何学的フローを用いたK-安定でないFano多様体の研究
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20K14308
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 九州大学, 数理学研究院, 助教 (20854706)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | J-方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
J-方程式はコンパクトKahler多様体上の標準計量の1つであり,DonaldsonとChenによって2000年代前半に導入された.この方程式はスカラー曲率一定Kahler計量の存在問題とも密接に関係しており,多くの専門家からの注目を集めている.スカラー曲率一定Kahler計量には勾配項を含む一般化としてCalabiのextremal Kahler計量があるが,この対応物をJ-方程式に対して考えようとしたときに,modified J-方程式が自然に思い付く.2016年にLi-Shiはmodified J-方程式に対してsubsolutionの概念を導入し,方程式の可解性はsubsolutionの存在と同値であることを示した.しかしながら,subsolutionの存在は依然として解析的な条件であり,実用的な判定法とは言い難い. そこで,今年度はtoric多様体の場合にmodified J-方程式の解が存在するための数値的な必要十分条件を,Nakai-Moishezon判定法を参考にしながら構成した.Nakai-Moishezon判定法はコホモロジー類のKahler性を判定する方法としてよく知られている.今回私が構成した判定法は勾配項の寄与を含み,そのベクトル場が生成する多様体上のtorus作用に付随した同変コホモロジー類と,各toric部分多様体との交叉数によって記述される.また,modified J-方程式のtwisted版に対してもsubsolutionの概念を導入し,方程式の可解性とsubsolutionの存在が同値であることを放物型のフローを用いて証明した.この結果は既に論文としてまとめ,arXivで公開中である.また,昨年度までの研究成果と合わせて既にいくつかのセミナーや研究集会で発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複素Hessian方程式の研究が捗り,論文の執筆,研究発表ともにコンスタントに行えている.
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Strategy for Future Research Activity |
J-方程式,dHYM方程式の最適退化についての研究を進める.Khalid-Dyrefeltによって,幾何学的フローの特異点が形成される集合がかなり詳しく調べられている.この結果が多様体に対称性がある場合(例えばtoricの場合)にどのように実現されるのかを調べることから始める.今年度行ったmodified J-方程式との関係についても調べていく予定である.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により一部の研究集会に対面参加できなかったため.特に海外渡航が旅費の大部分を占めているが,これが難しい状況であった.今後,コロナウイルス対策が緩和されるにつれて国内外の対面開催の研究集会が増えてくると思われるので,出張旅費や招聘旅費に充てたいと考えている.
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