2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K14309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 勝巳 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (90850610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 結び目 / Kontsevich不変量 / 量子不変量 / 有限型不変量 / 可逆性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では量子不変量が結び目の可逆性を判定しうるかという問題について調べており、特に、結び目の量子不変量や(有理係数の)有限型不変量に対して普遍性を持つKontsevich不変量と呼ばれる不変量について可逆判定性を持つかどうかを明らかにすることを第一の目標としている。Kontsevich不変量が値をとる開Jacobi図の空間と呼ばれる線型空間について調べることでKontsevich不変量自体の性質を導くと言うのが本研究の方針である。 二年目までの研究では当初の予定通り有理係数の開Jacobi図について調べていたが、満足な結果や有力な方針などは得られなかった。そこで今年度は有理数以外に値をとる有限型不変量も視野に入れ、有理係数以外の開Jacobi図の空間について研究を行うことにした。具体的には、開Jacobi図の空間の中で最も基本的で普遍的な整係数のものについてどのような捩れ元が存在するか、また、奇数個の一価頂点を持つような開Jacobi図で非自明なものが存在するかについて調べた。 結果として、整係数の開Jacobi図の空間には任意の素数を位数とする、奇数個の一価頂点を持つような非自明な元が大量に存在することがわかり、さらにその一部については対応するような非自明な元がS^1上のJacobi図の空間に存在することも証明できた。これらは結び目の向きを捉えるような有限型不変量が存在するための必要条件となっており、特に後者についてはもしそのような元の中で捩れ元でないようなものが存在すればKontsevich不変量が結び目の向きを捉えること、すなわち十分性も従うことが知られている。残念ながらこの十分性を示す方法は見つかっていないが、例えば開Jacobi図の空間に3以上の位数を持つ元が存在するということはそれ自体が非自明であり、むしろ予想に反する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
整係数の(開)Jacobi図の空間については研究が進んだが、主目的である有理係数の場合については本質的な進展は得られなかった。他の係数の場合についても代数的な結果にとどまり、トポロジーの問題に還元することはできなかった。研究の過程で未知の不変量は見つかったものの、有限型不変量とはなっておらず、そもそも非自明なものかどうかもわかっていない。全体としては満足のいく結果とは言えないだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度一般係数の配置空間積分を研究した中で見つかった不変量が非自明な値を取り得るかどうか調べる。非自明であったとしても単純な意味では有限型不変量とはなっておらず、ここから有限型不変量が得られる可能性も低いのではないかと考えているものの、この不変量の性質や既に知られている不変量との関係を調べるのは重要な課題だと思われる。 もう一つの方向として、整係数のAlexander加群から向きの情報を取り出せないかとも考えている。現状では向きの情報を持つ場合があることは知られているものの、それを不変量のようなわかりやすい形で取り出す方法は知られていないようなので、これを試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策として国内外の研究集会の多くがオンラインもしくはハイブリッド型での開催へ変更となり、出張旅費として使用する予定であった分を次年度へと繰り越すこととなった。徐々に対面開催される研究集会も増えてきているので、繰り越し分については今後の旅費として使用する予定である。
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