2022 Fiscal Year Research-status Report
シャドウによる3次元・4次元多様体の幾何構造の研究
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20K14316
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
直江 央寛 中央大学, 理工学部, 助教 (10823255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 4次元多様体 / シャドウ / 2次元結び目 / シャドウ複雑度 / トライセクション / Kirby-Thompson 不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度より継続していた2次元結び目のシャドウに関する研究について,証明の精査を行った.さらに,特殊シャドウ複雑度に関する考察を深めた.この研究に関する論文の執筆を完了し,査読付国際誌に投稿した. また,4次元多様体の不変量である Kirby-Thompson 不変量についての研究を行った.Kirby-Thompson 不変量は,4次元多様体を表示するためのトライセクション図式と呼ばれる曲面上の曲線族のある種の複雑さを用いて定義される.浅野喜敬氏,小川将輝氏とともに,Kirby-Thompson 不変量に関するいくつかの不等式を証明した.具体的に,Kirby-Thompson 不変量は整数値の不変量であるため,その値が固定した整数以下であるという状況下でハンドル分解の条件を導き,そこから Kirby-Thompson 不変量の下界を与えた.また,Kirby-Thompson 不変量の値と曲線族の交叉行列の変形の間に関係を見出し,1次ホモロジー群が有限な場合にその位数によって Kirby-Thompson 不変量の下界を与えることができた.これにより,Kirby-Thompson 不変量は上に非有界であることが示せた.さらに,非零の Kirby-Thompson 不変量をもつ4次元多様体とその値について,初めて具体的な例を与えることができた.これらの内容をまとめた論文を執筆し,査読付国際誌に投稿した. 上記の研究については,研究集会等で報告を行った.さらに,2次元結び目のシャドウ複雑度,(橋) トライセクション,その種数などの間の関係についても考察を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4次元多様体の特殊シャドウ複雑度は finite-to-one であるが,一方で2次元結び目のシャドウ複雑度はその性質を持たないことが判明した.これは研究開始時点では予期していなかったことであり,この研究における大きな成果のひとつである.執筆した論文については,当初の想定よりもページ数がかさみ執筆に時間を要したが,専門家からの助言もあり,十分に質を高めることができた. Kirby-Thompson 不変量はある種の最小値として定義される量であるため,一般に下界を与えることは難しい.当初はより多くの条件を課した下で具体例の計算を目的としていたが,議論の過程で Kirby-Thompson 不変量が増大するメカニズムに気づいた.とくに,下から評価する増加関数を具体的に与えた点は,大きな成果と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,2次元結び目のシャドウ複雑度,(橋) トライセクション,その種数などの間の関係についての研究を進める.そのために,2次元結び目を含む4次元多様体のハンドル分解の考察を行い,そこから得られるトライセクションについての理解を深める必要がある.また,接触構造・シンプレクティック構造とシャドウや多面体の関連についても継続して研究を進める. 関連分野の研究者と行っている (オンライン) セミナーを継続する.国内外の研究集会に参加し研究発表および意見交換を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に関する懸念から国外出張を控えたため次年度使用額が生じた.今年度は国内外の研究集会・シンポジウムに積極的に参加するとともに,研究環境の整備費用に当てる.
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