2021 Fiscal Year Research-status Report
有限生成群のなす空間上における増大度およびスペクトル半径の連続性の研究
Project/Area Number |
20K14318
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
雪田 友成 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (80843903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コクセター群 / 標識付き群 / スペクトル半径 / 双曲群 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限生成群Gとその有限生成系Sの組(G, S)の全体にGrigorchukにより距離が定められ、これを標識付き群の空間という。本研究は、有限生成群Gとしてコクセター群を考え、その生成系としてコクセター生成系と呼ばれるものを取り、これらの全体をコクセター群の空間と定め位相的性質および幾何群論的性質の研究を行うものである。 本年度はコクセター群の空間の位相的性質とスペクトル半径の性質に関する研究を行った。具体的には以下のことを明らかにした。 (1) コクセター群とコクセター生成系の組(G, S)に対して、コクセター図と呼ばれる辺ラベル付き有限グラフが対応する。MoussongとCapraceはコクセター群がGromov双曲群または相対双曲群となる必要十分条件をコクセター図の言葉で表している。昨年度の研究において、コクセター系の列がコクセター系の空間において収束する必要十分条件はコクセター図のグラフがラベルも込めて収束することであることがわかっている。本年度は、この結果とMoussong, Capraceによる結果を合わせることでGromov双曲的コクセター群の極限の性質を明らかにすることを目指した。 (2) 昨年は増大度がコクセター系の空間上の関数として連続であることを示した。 (G, S)のケーリーグラフ上の単純ランダムウォークを考えることでスペクトル半径が定義され、スペクトル半径もまた増大度と同様に群の増大する早さを表していると考ることができる。このことから、スペクトル半径が連続であることを明らかにすることを目標に研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) コクセター系の列の収束について、極限として得られるコクセター系の列が含む有限コクセター部分群を決定することができたことから、Gromov双曲コクセター系の収束列の極限がGromov双曲コクセター群となる必要条件を明らかにすることができた。一方で、Gromov双曲コクセター系の列が相対双曲コクセター群に収束する条件については不明のままであるため。
(2) Dvorak, Moharによる有限グラフのスペクトル半径の評価を用いることで、2次元双曲離散鏡映群の特別なクラスでZ/2Zの自由積に収束する場合にはスペクトル半径の連続性は明らかにすることができた。一方で、極限がZ/2Zの自由積でない場合や2次元双曲離散鏡映群一般の場合での連続性は示すことができていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は(1), (2)について次のように行う。 (1) Gromov双曲コクセター系の極限に相対双曲コクセター群が現れる必要十分条件を記述することを目指す。Moussong, Capraceによる双曲性の特徴付けはDavis複体を用いているため、コクセター系の収束に関してDavis複体がどのように変化するかを記述することを行う。
(2) (G, S)のスペクトル半径を評価する方法としてケーリーグラフのcone type labelingを用いる方法が知られている。一般にcone type labelingを決定することは簡単ではないが、コクセター系の場合にはcone type labelingをルート系を用いて記述する方法が知られている。そこで、コクセター系の収束に関するルート系の振る舞いを調べることから行う。得られた結果を用いてcone type labelingによるスペクトル半径の評価を行うことで連続性を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続きコロナウィルスにより予定していた海外出張に行けなかったため。 次年度は渡航可能であれば海外への長期滞在及び研究集会に参加するための費用として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)