2021 Fiscal Year Research-status Report
完全WKB解析と位相的漸化式によるパンルヴェ方程式の研究
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20K14323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩木 耕平 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (00750598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 完全WKB解析 / 位相的漸化式 / BPS構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
受入中のJSPS外国人特別研究員 Omar Kidwai 氏とともに位相的漸化式と完全WKB解析とスペクトル・ネットワーク, 特にBPS構造に関する研究を行い、超幾何微分方程式, およびその合流として得られる微分方程式の古典極限に位相的漸化式を適用した際に, 量子曲線の Voros 係数の Borel 和が BPS 構造に付随する Riemann-Hilbert 問題の解となることを示し, 自由エネルギーの Borel 和を「 Barnes の G-函数で記述する公式を与え, それと Bridgeland 氏が導入した BPS 構造に付随するタウ函数が本質的に一致することを示した. これらは昨年度に得られていた成果の拡張であり, すでにプレプリントとしてまとめ, 雑誌に投稿中である. 位相的漸化式とPainleve方程式との関係に関してもいくつかの考察を行った. まず, 位相的漸化式の分配函数の時間変数に関する漸近展開を計算する手法を開発し、それをもとに分配函数の漸近展開と (不確定) 共形ブロックなどを比較する術を得た. まだ数学的に厳密な主張を述べられるほどに理論が整備された訳ではないが, 今後は Painleve 方程式を経由して位相的漸化式と共形場理論, ゲージ理論の比較にも取り組みたい。 また, q-差分方程式の完全WKB解析の理論の構築に向けた第一歩として, q-Airy 方程式の完全WKB解析に着手し, WKB解の Borel 総和可能性の判定に向けたいくつかの成果は得られた. 次年度には成果をまとめて論文を執筆したいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位相的漸化式と BPS 構造の関係について, 昨年度までの成果の拡張が得られたことや, q-差分方程式の完全WKB解析に関していくつかの成果が得られたので, 研究の進捗状況はおおむね順調であると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
超幾何方程式の古典極限のように種数0のスペクトル曲線に関しては位相的漸化式の自由エネルギーを BPS 指数で記述する公式が得られたが, 高種数のスペクトル曲線の場合に類似の結果が成立するかどうかを探ることは興味深い課題である. そのままの公式が成立するとは思えないが, 位相的漸化式とPainleve方程式の関係性などを参考に, 拡張の可能性を議論してゆきたい. また q-差分方程式に関しては引き続き研究を進めてゆく予定である.
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Causes of Carryover |
昨年度もコロナウイルス感染症の影響で十分な研究活動ができず、次年度使用額が発生した。
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