2020 Fiscal Year Research-status Report
Deformation/rigidity theoryと冨田・竹崎理論
Project/Area Number |
20K14324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯野 優介 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (80783076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | III型フォンノイマン環 / 冨田・竹崎理論 / エルゴード理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォンノイマン環とは,(簡単に言えば)無限次元の行列環の事である.特にトレース写像を持たない場合に,III型フォンノイマン環という.これは物理学にも現れる自然な研究対象であり,私はこれを数学的な視点から研究している.本研究は,トレース写像を持つ場合に得られた近年の研究結果を,III型の場合に再現する事を基本的目標としている. 特に冨田竹崎理論の重要な道具である連続核を用いた研究を行う. 今年度は特に「離散群の測度空間への作用」を中心に研究を行った.このような作用からフォンノイマン環を構成する事が出来るのはよく知られており,特に作用が測度を保たない場合にフォンノイマン環はIII型になる.これはエルゴード理論とも関連する重要な例である.特にベルヌーイ型の作用やガウシアン作用と呼ばれるクラスの作用に対してIII型の作用を考えると,その基本的構造(例えばエルゴード性など)に群の幾何学的情報が現れる事がある.これは比較的最近示された話であり,非常に興味深い. 私は今年度,このベルヌーイ型の作用に着目し,solidと呼ばれる剛性を満たす例を構成する事に成功した.solidとは作用の「部分同値関係」に対する剛性であり,ようするに「考えている作用の部分集合にあたるものに強い制限が出来る」という類の性質である.作用がIII型でない場合には,広く知られた重要定理であるが,III型の場合には全くの新しい定理である.全てのベルヌーイ型作用に対して証明出来たわけではないが,知られている具体例を多く含む,十分に一般的な形で証明する事が出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,群作用フォンノイマン環に対する剛性定理を証明する事が出来たから.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続きIII型フォンノイマン環の構造研究を続けて行く.今年度同様,離散群の測度空間への作用を研究対象とする予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ過により予定していた出張が全く出来なかったためずれが生じた.次年度は可能な範囲で出張する事を目指している.
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