2021 Fiscal Year Research-status Report
Deformation/rigidity theoryと冨田・竹崎理論
Project/Area Number |
20K14324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯野 優介 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (80783076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | III型フォンノイマン環 / 冨田・竹崎理論 / 自己同型 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォンノイマン環とは,(簡単に言えば)無限次元の行列環の事である.特にトレース写像を持たない場合に,III型フォンノイマン環という.これは物理学にも現れる自然な研究対象であり,私はこれを数学的な視点から研究している.本研究は,トレース写像を持つ場合に得られた近年の研究結果を,III型の場合に再現する事を基本的目標としている. 特に冨田竹崎理論の重要な道具である連続核を用いた研究を行う. 今年度はHaagerup-Stormer予想(1991)に取り組んだ.これはIII型フォンノイマン環の自己同型に関する予想であり,非常にいい加減に説明すると以下のようなものである:環上の状態(良い線形汎関数の事)の性質をあまり変えない自己同型はモジュラー作用素しかない.従順環(物理学に現れるクラス)については成り立つ事が知られているが,非従順環の場合に予想が成り立つ例は全く知られていなかった. 私はC. Houdayer氏との共同研究で,非従順環の場合にこの予想が成り立つ例を構成する事に成功した.より詳しく,従順環をテンソルで吸収するような環であればいつでも予想が肯定的に成り立つ事を証明した.これは数多くの新しい例を含む,興味深い結果である.他にもテンソルの形をしていない例として,自由荒木・Woods環と呼ばれるクラスについてもある程度の結果を示す事が出来た. これらの証明では上述した近年の研究結果の一つである「二つの状態に対するintertwiningの技術」が本質的な役割を果たしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,近年の研究結果を用いてIII型フォンノイマン環の新しい構造定理を証明する事が出来たから.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続きIII型フォンノイマン環の構造研究を続けて行く.来年度は離散群の測度空間への作用を研究対象とする予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ過によって予定していた海外出張が出来なかったため.次年度に(可能であれば)海外出張を行い,さらに国内の研究者との交流をこれまで以上に行う事で研究費を使用する予定である.
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