2021 Fiscal Year Research-status Report
Koksma-Hlawka型不等式を礎とする準モンテカルロ法の研究
Project/Area Number |
20K14326
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 航介 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (20868674)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 準モンテカルロ法 / 乱択化準モンテカルロ法 / 優良格子点法 |
Outline of Annual Research Achievements |
準モンテカルロ法は、サンプル点集合をランダムではなく超一様にとる(数学的に賢くデザインする)ことにより、数値積分の積分誤差を小さくするというアルゴリズムである。さらに、サンプル点集合の一様さを保ったまま上手にランダムネスを加えると、よい積分誤差と統計的性質の両方を保証することができる。これは乱択化準モンテカルロ法と呼ばれている。 私は、オーストラリアUNSW大学の Josef Dick 教授、東京大学の合田隆准教授との共著論文により、乱択化準モンテカルロ法の新しいアルゴリズムとして randomized component by component (randomized CBC) アルゴリズムを提案した。CBCアルゴリズムは格子という種類の点集合のうち性質のよいものを探索する決定的、構成的なアルゴリズムであり、準モンテカルロ法の分野ではよく用いられている。本論文では、CBCアルゴリズムでは貪欲に生成ベクトルを定めていたところにランダムネスを取り入れることで、理論的にほぼ最良な積分誤差オーダーが得られることを証明した。CBCアルゴリズムという有用なアルゴリズムの乱択化に意味があることを明らかにした点は、本論文の大きな功績であると考えている。なお、得られた積分誤差オーダーと同等な上界は Kritzer-Kuo-Nuyens-Ullrich によりすでに得られていたが、彼らの結果は残念ながら実装するのが難しかった。一方、我々の結果は実装が容易であり、実際に数値実験も行っている。また、上記の論文では格子だけでなく多項式格子に対する議論も同時に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乱択化準モンテカルロ法は、よい積分誤差の収束と統計的な手法を両立できる、きわめて実用的なアルゴリズムである。本年は、CBC アルゴリズムというよく知られたアルゴリズムを乱択化するという興味深い結果を発表することができた。この結果は、関数のノルムと点集合のよさを分離する Koksma-Hlawka 型不等式の活用により得られたもので、Koksma-Hlawka 型不等式の理解をまた一つ進めたものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、これまでの研究を継続させ、さらなる Koksma-Hlawka 型不等式の活用を目指す。具体的には、以下のようなテーマに取り組みたい。 1. 乱択化の更なる研究を進める。乱択化で特筆すべき点として、関数空間によっては「準モンテカルロ法の収束オーダー」と「モンテカルロ法の収束オーダー」を合算できるという点が挙げられる。本年度の成果もまさにそのような結果である。本年度は、higher order digital net や higher order polynomial lattice について同様な結果が得られるか調べる。 2. ユークリッド空間上の数値積分を考える。準モンテカルロ法では、一般的に積分領域は単位立方体上である。しかし実用上は積分領域がユークリッド空間上となることも多い。そのような問題の対処法として、単位立方体に引き戻して考えるという手法が知られている。この手法と Koksma-Hlawka 型不等式との交わりについて研究する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響により、出張を予定していた国際研究集会がオンラインでの開催になった。また、予定していた研究打ち合わせもキャンセルした。 持ち越した金額は、主に出張費として使用することを計画している。具体的には、参加予定(講演申し込み済み)の国際研究集会が現地で行われることがすでに確定しているので、そのための出張費として使用する。
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