2021 Fiscal Year Research-status Report
Spectral theory for unitary operators and its applications to scattering theory
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20K14327
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
森岡 悠 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (80726597)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関数解析学 / 散乱理論 / 関数方程式論 / スペクトル理論 / 量子ウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
量子力学に関連する数理モデル、特にシュレーディンガー方程式と量子ウォークに対する時間定常的な散乱理論では、要所にユニタリ作用素が現れる。散乱波に含まれる散乱行列は、あるコンパクト多様体上のヒルベルト空間におけるユニタリ作用素である。離散時間量子ウォークの時間発展作用素は、シフト作用ととコイン作用素からなるユニタリ作用素で記述される。いずれの場合も、散乱理論の立場から、ユニタリ作用素のスペクトルの構造を明らかにすることを目的として研究を進める。今年度は、量子ウォークの研究に関して以下の成果を得た。 (1)有限な範囲で摂動を持つ1次元量子ウォークについて、摂動に流入する波が摂動領域にどの程度残留するのかについて、定常状態の観点から明らかにした。具体的には、連続スペクトルの内部、外部、端点のそれぞれについて、摂動領域の幅をパラメータとした漸近挙動の意味で、摂動内部に残留するエネルギーを計算した。 (2)有限な範囲で摂動を持つ1次元量子ウォークについて、その系が持つ散乱行列を解析接続したものの極として共鳴極を定義し、状態の生き残り確率を共鳴極を用いて漸近展開するとともに、多くの場合共鳴極は単純であることを確認した。 以上の量子ウォークに関する研究は共同研究として論文にまとめ、一部は出版済みであり、残りは投稿および査読の手続き中である。 (3)シュレーディンガー方程式の散乱行列と、非散乱エネルギーつまり散乱行列の固有値1に関する研究は、引き続き準備的な研究から考え直さねばならない状況にあり、今年度の研究により、準古典解析的な枠組みを用いることが適当であろうことと、そのためには古典軌道の解析に関する結果を適用するべきであることを理解したが、論文にまとめる段階までは至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
量子ウォークのスペクトル・散乱理論と関連する話題に関しては、研究遂行の流れの中で共著論文となったものも含めて令和3年度も一定の成果を上げることができた。一方で、シュレーディンガー方程式の非散乱エネルギーの研究に関しては、音響波動方程式に対して用いられてきた過去の研究手法を修正・拡張する方向で進めてきたのだが、この方向性は適当ではないことを理解するのに時間を要してしまった。準古典解析の手法、特にWKB解析を用いてシュレーディンガー方程式をより詳しく調べる必要があると思われるが、この方向に関してさらに予備的な研究が必要であり、具体的な結果を得るまでにさらに時間を要することが予想される。 令和3年度も、新型コロナウィルス感染症対策のために、研究上の情報交換の機会が著しく制限された状況にあった。令和2年度と比べてオンライン環境の活用に関しては体制が整ったとはいえ、大部分は独力での研究によらざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ハミルトン系による古典軌道の解析を土台にして準古典解析の手法を適用する。そのための予備的考察を進め、本研究課題に関する成果を得る。特に、長距離型散乱理論でよく知られている、磯崎-北田型修正作用素によって散乱行列を擬微分作用素またはフーリエ積分作用素で表示する方法が有効ではないかと予測している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、学会や研究集会が中止、延期、またはオンラインでの開催となり、感染防止の観点から、対面での研究打ち合わせもほとんどを中止した。そのため、研究成果発表を行うために計画していた旅費を使用することができなかった。 今年度は対面での研究打ち合わせや研究集会が再開される可能性があるため、まずはこれらにおいて研究発表や打ち合わせを行う目的で経費を使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)