2020 Fiscal Year Research-status Report
Geometric characterization of nonlinear metric spaces
Project/Area Number |
20K14333
|
Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
冨澤 佑季乃 新潟工科大学, 工学部, 講師 (10809403)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Busemann 空間 / CAT(0) 空間 / Hadamard 空間 / R-tree / 一様凸 / 凸結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
【成果】学術論文 "Distances between convex combinations in Hadamard spaces" (Linear and Nonlinear Analysis, Vol. 6, No. 1 (2020) 153-166) を掲載。 【内容】「Hadamard 空間と Euclid 平面の形状の差が、Hadamard 空間内における3点の結合順序が異なる2種類の凸組合の関係式を与えること」を示した。 【意義】線形構造を持たない距離空間は、数理的計算に有用だと知られている。純粋数学の立場からは、応用面での展望を含めて、この空間の性質研究に価値がある。本研究では、実函数論を用いて距離空間の幾何学を調査し、特に3点の凸結合について新しい性質を示した。これは「研究実施計画」の最終目標である「線形空間の幾何学的議論を非線形へ一般化する」ことに必要な知見である。 【詳細】非正方向曲線を有する測地距離空間の性質を、その空間内の三角形と Euclid 平面の三角形の比較により明らかにした。三角形を扱うとき、頂点による「3点の凸結合」を考える。線形空間では Beauzamy(2011) が、「3点の凸結合」を用いて Banach 空間の一様凸性の特徴付けを得ている。この知見を測地距離空間へ一般化するには、線形構造を有さないために扱いが困難な「3点の凸組合」の新しい性質を導く必要があった。本問題に対して、一様凸な測地距離空間内の『2種類の「3点の凸結合」』に着目し、その『2種類の凸結合間の距離を導き、それが Hadamard 空間と Euclid 平面の形状の差で与えられる値以下である』ことを示した。本結果は、一様凸線形空間における Beauzamy が示した結果の一般化である。また具体例として、距離空間 R-tree において本結果が実際に成り立つことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の計画では、3点に対して一意な三角形を持つ非線形空間で点間の距離の性質を研究する、としていた。実際に、凸性を有する測地線空間における三角形内の凸結合の性質を研究し、それが線形空間の場合の一般化となりうるかを調査した。 (i)三角形の3頂点による凸結合と頂点との距離:上記「研究実績の概要」に書かれた結果を得て、学術論文に掲載された。 (ii)上記(i)で扱った距離のn乗と三角形の2辺のn乗の和を定数倍した値との関係:線形空間の場合の一般化になりうる関係式を得ており、論文を制作中である。またこの結果は、9月に日本数学会秋季分科会(熊本大学:オンライン実施)で発表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
【第一段階(2021年度)】既に得ている研究成果の発表:上記「現在までの進捗状況(ii)」に書かれた研究成果を学術論文として投稿、掲載されることを目指す。 【第二段階(2022年度以降)】非線形空間の「丸さ」を表す幾何学的定数を新しく導入して、その取りうる値の範囲を研究する。これは三角形の辺の比を用いて新しい定数式を構築し、凸性を有する非線形空間の新しい特徴づけを試みるものである。これまでに得られた研究成果を用いることで、幾何学的定数の設定が可能と想定している。
|
Causes of Carryover |
【生じた理由】新型ウイルスによる生活様式の変化により、研究集会や学会などの物理的会合が中止され、それに使用する予定であった旅費が使用されなかった。具体的には、熊本大学と慶應義塾大学への旅費として使用する予定であったが、どちらもオンライン開催に切り替わったため、その分の旅費代が未使用となった。 【使用計画】学術論文の掲載料やオープンアクセス料、また必要な文献の購入に使用する予定である。本研究の計画段階では学術集会参加のための旅費で多くの支出を見込んでいたが、生活様式の変化により研究目的の旅行は制限されるため、実際に使用される研究経費は予定よりも少なくなると予想される。
|