2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on blowup phenomena for Shcr\"odinger equations with non-gauge invariant power type nonlinearities
Project/Area Number |
20K14337
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 和将 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (40868262)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シュレーディンガー方程式 / 周期境界条件 / 非ゲージ不変性 / 有限時刻爆発 / 必要充分条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和二年度の研究では、一次元の周期境界条件に於いて、絶対値の自乗の非線型項を有するシュレーディンガー方程式の初期値問題に対する時間大域可解性を検討した。本初期値問題の時間大域可解性の研究は、解の空間変数に対するフーリエ0モードに着目した研究が行わていた。一方で、解の空間変数に対する振動がどの様に時間大域可解性に影響するかは検討されておらず、解析手法に就いても未確立である。この様な状況は、シュレーディンガー方程式や周期境界条件の初期値問題に関わらず、広く時間大域可解性の研究に於いて同様に未解決である。 本研究では、Bourgainが導入したシュレーディンガー方程式の線型解による解の分解を用いて、時間大域可解性の為の初期値の必要充分条件を導出した。特に、これまでの数値計算による予想とは異なり、初期状態の僅かな振動でさえも解の有限時刻爆発現象を引き起こす事を証明した。これは、フーリエ0モード以外の情報を加味してこなかった既存の研究とは一線を画するものである。又、同初期値問題に見受けられる時間大域解の極端な不安定性も初めて証明された。 本研究の特色は、分解された解が満たす無限連立常微分方程式系を共鳴部と非共鳴部に分解し、二元連立常微分方程式系に帰着させた事である。取分け、共鳴効果を利用して共鳴部を無視可能な剰余項として評価する事で、解析可能な単純な非共鳴部の常微分方程式系を抽出した点が他の爆発解析とは異なる点である。非共鳴部の成す連立方程式系の解析に就いても、時間大域可解性の為の条件を精査した他、解をランベルトのW関数と呼ばれる特殊関数によって具体的に書き下す事に成功した。この解の表現により、これまで以上に爆発解の爆発の様子を詳しく見る事ができた。なお本研究成果は、ピサ大学のV. Georgiev教授との議論の中で得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の令和二年度の研究の目標は、これまで知られていなかった時間大域解の存在を示す事であった。空間に就いて変動しない初期状態に対しては、時間大域解が存在する事が知られていた。又、数値実験から、このような空間に就いて変動しない時間大域解はある種の安定性を有する事が示唆されていた。即ち時間大域解の周辺にある微細な振動を伴う解が、やはり時間大域解となる事が予想されていた。この為、当初の研究目標は時間大域解の安定性を記述する事であった。そして、安定性の研究で得られた知見を礎として、解が有限時刻で爆発する為の仕組みを明らかにし、時間大域可解性の為の必要充分条件を求める事は、令和三年度以降の目標であった。 一方で、時間大域可解性の研究の過程で、方程式の挙動を主導的に決定する非共鳴部の二元連立常微分方程式系が発見された。この非共鳴部の連立常微分方程式系の研究により、時間大域可解性の為の初期状態の必要充分条件が得られたのは上記の通りである。この成果により、当初の安定性の予測は完全に否定されたばかりではなく、解が有限時刻で爆発する為の仕組みが当初の目的以上に判明した。 令和二年度の研究活動では、当初予定した海外渡航や研究集会への開催・参加が叶わず、計画から大きな後れが予想された。一方で遠隔での討論を繰り返す事で、当初の計画以上に研究が進展した。この為、令和二年度の研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度の研究では、一次元の周期境界条件に於ける、二次の非線型項を伴うシュレディンガー方程式の初期値問題に対して、時間大域可解性の為の初期状態の必要充分条件を導出した。この一次元に於ける二次の非線型項を伴う初期値問題は、非線型初期値問題としては最も単純なものである。この為、今後の研究では高次元と一般次数に対する初期値問題の、時間大域可解性の為の必要充分条件を検討する。特に、令和三年度の研究では空間二次元に於ける初期値問題の時間大域可解性を検討する。 空間が二次元で非線型項が二次である場合、BourgainのFourier制限法の観点から、令和二年度の手法を直接応用する事は不可能である。これは、令和二年度の手法では初期値問題が自乗可積分空間に於いて時間局所に適切である必要がある為である。この自乗可積分間に於ける初期値問題の適切性は空間二次元に於いても未解決問題である。特に空間二次元に於ける線型解のBourgainの意味での平滑化効果は一次元に比べて弱く、Fourier制限法を直接適用する事は不可能である。この為、令和三年度の研究では、空間二次元に於いて、共鳴部の解の挙動の影響を先ず吟味する。 更に、令和三年度の研究では、非共鳴部の解の挙動に対する影響に就いても再考する。空間一次元に於ける不安定性の要因は、非共鳴部による常微分方程式系に於いて、正値時間大域解が存在しない事に起因する。一方で空間二次元の場合、直交する空間周波数の影響で、非共鳴部による常微分方程式系には正値時間大域解が存在する事が、Pisa大学のV. Georgiev教授と早稲田大学の小澤徹教授との議論によって、令和三年度に入って明らかになった。この為、空間二次元の時間大域可解性は本質的に空間一次元の場合とは異なる可能性がある。令和三年度の研究は、この点を含めて空間二次元の場合を精査する事を目標とする。
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Causes of Carryover |
令和二年度の研究計画では、国際研究集会を開催し研究成果の発表と情報収集を大々的に行う予定であった。また、国内外の研究集会に参加する事で情報を収集し、Pisa大学のV.Georgiev教授を訪れ研究打ち合わせを行う予定であった。然しながら、新型コロナウイルスの影響により、計画されていた大型の国内・国際研究集会が中止された。更にイタリアへの研究出張に就いても実施が不可能となった。この為、計画していた研究費の支出を殆ど実行する事ができなかった。 令和三年度の研究計画では、もともと計画されていた国際研究集会の企画に加えて、令和二年度の計画で企画されていた研究集会を開催する。そして、令和二年度の研究で得られた研究成果の発表と令和三年度の研究の為の情報収集を行う。令和三年度に於いても、新型コロナウイルスの感染状況は油断ができない状況ではあるが、ワクチンの接種の普及次第では、充分に研究集会を開催できる可能性があると考えられる。この為、令和三年度の研究計画に令和二年度に企画していた研究集会を加える。更に長期の研究打ち合わせの滞在は令和三年度に於いても困難であると考えられるので、研究打ち合わせをリモートで行う為の環境を更に整える為に、情報機器の充実を図る。又、文献調査も継続して行い、今年度の研究成果に繋げていきたい。
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Research Products
(8 results)